伊藤東京大学大学院教授のセミナーは、受講した企業経営者に「経済の大きな流れについて理解すること」「変化の時代では足下を見ることだけでなく2~3年先を考えること」を冒頭に話された。


(先進国と新興国)

 第二次世界大戦後、ベビーブームで多くの新生児が生まれ先進国は人口構成が逆ピラミットで高齢化が進んでいる。一方、新興国では人口構成がピラミットそのもので生産・消費人口が多く、世界経済の軸が新興国にシフトしている。デジタル化など技術革新は新興国に成長のチャンスをもたらした。給与が日本と対すれば、韓国1/2、中国1/10と大量生産消費品では新興国に生産拠点を移転する動きは止まらず、外資導入を容認すれば先進国から新興国に大量のお金が流れている。


(ビジネスモデルのポイント)

 これからの下流での事業経営ではビジネスモデルの構築がキーポイントであり、それは・・
1,変化をつかむ事
2,ITを駆使する事
3,少子高齢化に対応する事 である。


(変化をつかむ事)

 少数大量生産の事例としてユニクロとニトリのspa戦略が参考になる。ユニクロはグローバル化の流れを自社の戦略として、アジアに進出して業績を伸ばしている。


spa戦略  http://www.jmrlsi.co.jp/mdb/yougo/my08/my0810.html
ユニクロ  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%83%8B%E3%82%AF%E3%83%AD
ニトリ    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%88%E3%83%AA
良品計画  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%89%AF%E5%93%81%E8%A8%88%E7%94%BB
サンクゼール  http://www.stcousair.co.jp/
朝日酒造 久保田  http://www.asahi-shuzo.co.jp/brand/kubota.html


(ITで成功する)

 成功事例は、大阪・東海バネ工業。サンプルマーケット(試作品加工)で過去の生産図面がサーバーにストックされており、電話一本で生産する。試作品は多くても10個と少数生産で受注単価が高く、リピータが多く、利益率が高い。

東海バネ工業  http://www.tokaibane.com/com/index.html


(少子高齢化)

 医療・介護・安心がキーワード。健康で生きられるサービスは成長する。GDP8%が10%になると想定すれば60兆円規模になる。皆保険制度の日本を、中国人・韓国人は「医療費タダは社会主義」と比喩している。また、「80歳で脳梗塞になればすぐに死ねるが、60歳で脳梗塞になればベットで20年生きる」となる医療体制は国の負担が多い。成熟したマーケットでは、官ではダメでも、民間では採算を合わせることができる。

 成熟したマーケットの農耕型ビジネスでは深掘りすることがポイント。九州の建設会社では、高速道路の草刈りを業務としていたが、その刈り取った草の処理に苦慮していた。そこで、有機肥料として加工し販売し、今では休耕田の刈り取りも請負、化学肥料の蓄積のない有機飼料として、安心・健康を売りとしている。


(リピート増やすこと)

 味には、(1)先味、(2)中味、(3)後味があるが、当社は食べ終わった後味の美味さが商いと考えていると牛丼の吉野家阿部社長は云っている。確かに、下流では後味を大事にすることでしか、お客は増えない。

吉野家  http://www.yoshinoya.com/


(円高の可能性)

 リーマンショックでは日本は失われた10年問題対応で先進国では最も痛手を受けなかった。痛手の大きい先進国はその対応策として各国協調し景気対策を行い、その行き過ぎで苦しんでいる。特に欧州では財政不安に陥っている。日本の経済状況が良い訳ではないが比較優位として円高となっている。超短期では70円台の可能性もある。後は、諸外国の景気回復がなければ円安には転じない。


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