大手スーパー、イトーヨーカドーがネット販売で、ミネラルウォーター24 本を123円などと誤表示し、掲示板サイトなどで話題となり注文が殺到する騒ぎがありました。オンラインショップ全盛の時代、「明日はわが身」ともいえる事例です。
 同社は注文者に表示価格での販売を行ったようですが、このケースで法的に売買契約の無効を主張するとすれば、民法95 条の「錯誤」が考えられます。同法では、意思表示の重要な要素に錯誤がある場合、表意者に重過失がなければ無効とします。また、相手方が錯誤を知っているときも無効の主張ができるとの判例があります。
 さて、この錯誤無効、税務申告でも適用できるのでしょうか。納税者が申告内容を間違えた場合に、「錯誤無効」とすることは可能なのか気になるところです。
 錯誤無効と税務申告の関係を示す最近のケースでは、法人税68 条「所得税額の控除」に関する平成18 年の裁決事例があります。公社債の利子や株式の配当などにかかる源泉所得税は、その額を確定申告書に記載することにより法人税額から控除できます。これについて、申告書の説明事項を読み違え記載しなかった会社が申告の無効を争ったものです。
 審判所は、申告納税制度において、確定申告書の記載内容の過誤を是正する際は税法の方法によるのが原則であり、錯誤無効は、その錯誤が客観的に「明白かつ重大」で、納税者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がある場合でなければ当らないとしまし
た。そして本件の記載もれは、「法の不知または誤解によるもの」であるとして無効を認めませんでした。なお、昭和39 年に所得税の確定申告について同様の最高裁判決があります。
 錯誤無効は、「特段の事情」の留保はあるものの難しいようです。
<情報提供:エヌピー通信社>