国税不服審判所はこのほど、アスベストの除去費用は「人為による異常な災害」ではないとして、雑損控除の適用を認めない裁決を下しました。
 請求人A氏は、平成18年9月に自宅の取り壊し工事を業者に依頼。工事着手後の同年10月、取り壊し中の建物にアスベストの含有が判明し、石綿障害予防規則に基づいてP市からアスベストの除去工事を行うよう指示を受けました。A氏は直ちに工事を中止し、アスベスト除去工事を専門業者に依頼、同年11 月1日に除去工事費用を支払いました。
 A氏は、同19 年3月確定申告書を提出し、アスベスト除去費用について雑損控除を適用する内容の申告を行いましたが、税務当局はこれを更正処分。処分を不服とした請求人は、国税不服審判所に審査請求しました。
 争点となるのは、自宅建物アスベストの含有が「災害」にあたるかどうかです。
 A氏は、建築当時は合法部材だったアスベストが、その後、有害性が判明したことにより、その除去が法律で義務付けられるまでに至った一連の流れは、「納税者の意思に基づかない事象」として「災害」に当たると主張。
 しかし審判所は、所得税法第72 条に規定する「災害」とは、自然界に生じた天災や、人為的なものについては、鉱害、火薬類の爆発事故など、自然界に生じた天災と同視すべき劇的な経過を経て被害を受ける事象を指すとしました。また、「アスベストが発見されたこと」については、予見、回避が不可能であることは認められますが、自治体から除去工事義務が課せられたこと自体は法令による要請であり、その費用負担は受任すべきとして「人為による異常な災害」ではないと判断、審査請求を棄却しました。