妻に支給し「必要経費」とした給与の額が、高すぎるとして否認された裁決がありました。
 青色申告者は、家族従業員(青色事業専従者)に支払った給与のうち一定範囲内のものは、事業所得の計算上「必要経費」にすることが認められています。
 請求人は税理士業を営み、妻(税理士資格なし)は年間を通じて会計業務や税理士補助業務に従事していました。妻が支払を受けた給与は平成16年分が1240万円、同17・18年分が各1280万円です。
 「著しく高額。労務の対価として相当とは認められない」とする税務署側に、請求人側は妻について①経験年数27 年②ほかの使用人では対応できない法人を担当③社会保険手続きなどの労務管理も担う――と特別扱いの理由で反論しました。
 国税不服審判所は、調査で①~③が事実と確認しましたが、これらは「税理士の下で税務会計事務に従事する者にとって特異なものとは認められないから、格別の評価をすることは相当でない」と退けました。しかし一方で、パソコンの稼動時間から、最も働いた使用人より約1.21 倍、妻が事業に従事していた事実も明らかになりました。
 焦点となったのは、「適正額をどう判断するか」という問題。審判所は、適正給与相当額について、(イ)事業従事時間が最も長いほかの使用人が支払を受けた給与の金額を1・21倍(ロ)一定の同業青色事業専従者の支払を受けた給与金額の平均――のいずれか高い金額とすることを決めました。
 このケースでは(イ)で算出された同16 年約520万円、同17 年約539万円、同18年約547 万円が適正給与額となり、それを上回る部分は認められませんでした。