昨年の最悪の状態から少しずつ改善されつつあった「完全失業率」と「有効求人倍率」がまた悪化傾向にあります。

 今回の悪化の原因の特徴は、世帯主の所得が減り、その穴埋めのために仕事を探す主婦が増えたためと総務省は分析しています。つまり、単純に倒産やリストラで失業者が増えたのではなく、新たに失業者・求職者として名乗り出た人が増えたという特異な現象なのです。残業削減等による所得の減少が進んでいることがこれらの指標の悪化からも伺えます。

 新卒に関しては、さらに厳しさを増しています。景気悪化が最大の理由ですが、高齢者雇用安定法の施行により65歳まで定年が延長され、育児介護休業法改正で、育児・介護でやむなく退職していた人も仕事を続けやすくなったことも重なり、新卒が雇用されるための「枠がなかなか空かない」状態になってきているのです。高齢者雇用安定法や育児介護休業法は少子高齢社会での労働者不足を前提に考えれば非常に良い法律ではありますが、景気の悪化で、日本の未来を支える若手にシワ寄せがきているのは大変憂慮される状況です。

 企業にとって採用を抑制することは、短期的には業績に良い影響を与えますが、中長期的に見て本当に良いかということも検討しなければいけません。企業は定期的に新しい血を入れないと錆付いてしまうのも事実です。一定期間人を採用しないと、歪な年齢構成を生み、人件費管理やポスト管理等でムリが発生するケースが多くなります。また、新たな人材採用は現有社員を刺激し、成長にも貢献するため、採用の抑制は社員の成長阻害にもなりかねません。(つづく)

(記事提供者:アタックス 稲垣 謙二)