(「クラウドはIT部門の変革を促すか その1」より続く)

 多数のサーバを集中管理し、多くの企業や消費者にサービスを提供する形態によって生み出される効率は、クラウドの大きな利点です。また、先行き不透明な経済情勢の中、IT戦略上情報システムの柔軟性や俊敏性の重要度が増している点も、必要なニーズを必要なだけ使用できるクラウドの特長と合致します。かつて大規模な投資が可能な大企業にしか得られなかった恩恵(例えば良質なアプリケーションや強靭なプラットフォーム)を、中小企業が享受できるようになることも大きな魅力でしょう。

 一方クラウドは、トラブルによる補償ルールや制度面で未整備な部分が少なくありません。そのため企業におけるクラウド活用は、信頼性に関する要件が幾分緩やかで、かつ、迅速な展開が求められる汎用性の高いアプリケーションから利用され、事業の根幹を支える基幹系システムにおける活用はまだ先になると見られていました。そんな中、グローバル企業が基幹システムにクラウドを活用し始めたことは、トラブルが不安で様子見という段階がそろそろ終わりつつあることを示唆しています。自前主義が厳しく問い直されるタイミングは、遠い将来のことではないかも知れません。

 クラウドの市場は拡大しており、政府も制度面の不備を補うべく対策を検討中です。クラウドをどう活用していくか、会社のIT戦略の重要性が高まっています。(了)

(記事提供者:アタックス 川合 和人)