国税庁が毎年発表している民間給与実態統計調査を見ると、平成20年における給与所得者の平均給与はおよそ430万円で、ここ10年間、常に右肩下がりの状況であることが分かります。
 サラリーマンの年間給与が減少を続ける昨今、「夢のマイホーム」が夢のままで終わる人が増加していることは想像に難くありません。そこで、「親の住宅を増築して、そこに住んでしまえ」という発想が出て来てもおかしくありませんが、このケースでは思わぬ税金が発生することになるので気を付けたいところです。

 親名義の建物に子が増築をすると、その増築部分については、民法上、建物の所有者である親の所有物となります。このとき、親が子どもに対して増築費用を支払っていなければ、親は子から増築費用相当額の贈与を受けたものとして贈与税が課税されます。
 なお、子が支払った増築資金に相当する建物の持分を親から子へ移転させ「共有」とすることで贈与税をゼロにすることは可能です。しかし、この場合、親が建物の持分の一部を子に譲渡したものとみなされ、移転した持分に相当する金額が譲渡所得として課税対象となります。

 また、住宅の持分を「共有」とすることが親から子への譲渡にあたるのであれば、親の譲渡所得について「居住用財産を譲渡した場合の3千万円の特別控除の特例」を適用できると考える人は少なくないでしょう。しかし、同特例は、売手と買手の関係が「親子や夫婦など特別な間柄」である場合には適用できないとされているため、このケースでは適用不可ということになります。
<情報提供:エヌピー通信社>