従業員が会社の商品を窃取し、売却したことによる収益は、「会社の売り上げには該当しない」とする裁決がありました。

 印刷業を営む法人である請求人P社は、印刷用紙の売却により得た収益を売り上げに計上していなかったとして、法人税の更正処分および過少申告加算税の賦課決定処分を受けました。しかしP社は、それらの紙取引が行われた事実を把握しておらず、税務調査時に初めて、従業員Fが印刷用紙を窃取し売却していたことが明らかになったのです。そのためP社は、紙取引による収益が「同社の従業員Fが印刷用紙を窃取して売却したことによるもの」であり、P社の売り上げではないとして審査請求を行いました。

 国税当局は、印刷用紙の所有権がP社にあったことや、取引にかかる納品書がP社のファックスを通じて送信されていたことなどを理由に、収益はP社の売り上げであることを主張しました。一方、P社は、紙取引による対価をすべて従業員Fが取得し、個人的に消費していること、この取引が従業員Fの業務の範囲を逸脱したものであったことなどから、売り上げには当たらないとしていました。

 これに対し国税不服審判所は、「P社の定款、商業登記簿から、P社は印刷用紙の販売を目的としていないこと」「従業員Fは経営に従事する立場になく、印刷用紙の保管・管理に関する業務を遂行する職務・権限を与えられていないこと」「従業員Fが、P社から窃取した印刷用紙を、架空の法人名を使って売却していたこと」などから、紙取引による収益はP社の売り上げに該当しないとして、国税当局に対して処分の全部取り消しを命じました。
<情報提供:エヌピー通信社>