所得税法では、至るところで「生計を一にする」ということばと出会います。例えば、控除の対象となる配偶者、扶養親族、寡婦・寡夫の定義に関する規定などです。雑損控除、医療費控除、配偶者控除、地震保険料控除などの規定にも登場します。
 言葉からは、「同じ屋根の下で生活を共にする人」だけをイメージしがちですが、「生計を一」は、実は意外と幅広いものです。
 必ずしもだれかがだれかを扶養するということではなく、また、必ずしも同居していることを指すわけでもありません。

 改めて整理すると、所得税法の「生計を一」には、勤務、修学、療養など都合上ほかの親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、①ほかの親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学などの余暇にはその親族のもとで起居を共にすることが常例となっている②これらの親族間で、常に生活費、学資金、療養などの送金が行われている場合――このようなケースは「生計を一」と認められます。
 逆に、親族が同一の家屋に起居していても、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合は「生計を一」とはいえません。「生計を一」というからには、生活の資を共にしていることが重要です。

 こうなると、「配偶者」は?「親族」は?という疑問がわいてきます。
 これら2つの言葉は民法に規定の軸足を置いています。配偶者は、「戸籍法の定めるところにより市区町村長等に婚姻の届出をした配偶者」です。外国人の場合で民法の規定によれない人は、その人の本国法に定める要件を満たすことで婚姻が成立した配偶者を指します。
 「親族」は、①6親等内の血族②配偶者3親等内の姻族のことです。
<情報提供:エヌピー通信社>