(「目的意識はありますか? その1」より続く)

 鈴木章氏がノーベル化学賞受賞時に大事だとおっしゃった「セレンディピティ」は、一般的に、偶然に新しいことを発見することと誤認されていることがあります。もちろん、今回の受賞が「偶然」の産物でないことは誰の目にも明らかです。では、氏のいう「セレンディピティ」とは何でしょう。

 英英辞書には、Serendipity : the natural ability to make interesting or valuable discoveries by accident.-London Dictionary of contemporary Englishとあります。セレンディピティとは、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値あるものを見つける能力・才能を示す言葉であり、何かを発見したという「現象」ではなく、何かを発見する「能力」を指すのです。

 この「能力」は、日々の弛まぬ努力によってのみ発揮されます。もともとの目的を超えた発見を見出すほどの強い目的意識をもつことが大事なのです。このようなことを鈴木氏の言葉から筆者は思いを新たに感じ取りました。企業が人財を育て、永続していくためには、セレンディピティを発揮するに足るほどの強い目的意識をもつことが重要であると再認識させられたのです。

 創業は「偶然」だったかも知れませんが、事業を継続していく上で、幾多のセレンディピティからもたらされた幸運があったはずです。その幸運は、何かを探し求める行動からもたらされたに違いありません。いま、どれほどの目的意識を持てているでしょうか。そして、共有できているでしょうか。(了)

(記事提供者:アタックス 入駒 慶吾)