(「経営改善に猶予はない その1」より続く)

 今回の円滑化法の延長に際して、金融庁は、銀行に対し、単なる件数・金額の報告ではなく、“実際に中小企業の経営改善がどのくらい進んでいるのかといった点を重視した”報告を求めることを検討しているとのことです。

 現状では、返済条件緩和をしたとしても原則「不良債権」として扱わなくてもいいというルールになっていますが、経営改善が進んでいない場合「不良債権」とするというルールに変更される可能性も想定されます。もしこのようなルール変更が実行された場合、返済猶予により資金繰りが楽になったことをいいことに、その間外部環境の好転をひたすら期待し、資産売却や人件費削減を含む徹底したリストラやビジネスモデルの改革といった経営努力を十分してこなかった企業は窮地に陥るでしょう。

 リーマンショック後、大企業は新興国を中心とした海外展開とリストラによって、売上・利益共に相当回復しています。一方、デフレ・人口減少・高齢化等に伴い縮小する国内市場をメインターゲットにしている中小企業にとって、厳しい経済環境は続いており、将来も大きく改善する可能性は低いでしょう。そういう中で、円滑化法の延長は、更なる時間的猶予をもらうという意味でいい知らせです。しかしながら、繰り返しになりますが、円滑化法によって経営改善が実現できるのではなく、銀行が経営改善をしてくれる訳でもありません。経営改善を実行していくのは企業、社長であり、経営改善にはもう猶予はないのです。(了)

(記事提供者:アタックス 平尾 敏也)