(「借金問題は資産算定と共に その1」より続く)

 国と地方の財政を考えるにあたっては、プライマリーバランスを考えるとわかりやすいのですが、現状の日本は、このプライマリーバランスが赤字です。つまり、借金の残高は減っていくのではなく、増加していくことになるのです。したがって、借金の膨張に歯止めをかけるには、まず、この赤字を解消することが必要だということになるのですが、有効な手立てが講じられていないのは、ご存知の通りです。

 一方、もうひとつの担保力である資産の話に目が向けられることは多くありません。皆さんの家計や会社の決算書を思い返してください。借金は確かにあるかもしれませんが、それの相対として、土地や建物といった資産があるはずです。有価証券などもあるでしょう。言い換えれば、借金を膨張させないためには、資産を売却して返済資金に当てるという選択肢も存在するのです。

 極論になりますが、仮に利益がゼロでも、借金に見合う価値のある資産があれば、借金の多寡を憂う必要は少ないのです。しかし問題なのは、「借金に見合う価値のある資産があれば」という前提であり、価値のある資産がなければ、その借金はたちまち憂うべき借金となります。従って、日本の借金の問題を論ずるには、資産の価値を正しく算定し、算定された資産と借金を比較することが必要であると考えます。(了)

(記事提供者:アタックス 林 裕人)