(「経営者は、社員への“メッセージ”を熟考せよ1」より続く)

 サガミの成果主義導入の事例でいえば、当然利益の源泉は店舗にあり、サービスの提供に関わるすべての社員が利益創出の鍵を握っています。つまり、ここで取り違えてならないのは、顧客満足の結果として利益が獲得できるというごくごく当たり前の原理原則です。したがって、社員に求めるのは利益ではなく、“顧客満足”であるべきです。さらには、小手先の“顧客満足”ではなく、継続して“顧客満足”を獲得し続けるための、意識改革であり提供サービスの向上なのです。

 会社にある様々な制度の中で、人事制度ほど経営者の思想や価値観が丸見えになる制度はありません。また、ネーミングも“メッセージ”の1つです。したがって、新たな制度を導入するという時には、その本質や意図が正しく伝わる言葉をよくよく吟味することが大変重要なのです。

 今回の事例に登場した “成果主義”。過去において「業績不振企業が行った人件費抑制策」というイメージが染み付いたこの言葉はあまり効果的とは思えません。あえてネーミングするならば、「顧客満足の結果として得られた利益の一部を還元する制度」という意味で、“顧客満足還元主義”というのはどうでしょうか。

 経営者は、今後これまで以上に変革を迫られ、新たな経営手法や制度導入を求められるでしょう。その中で大切なことは、実現したいことの本質を見誤らないこと、そして意図を伝えるのに最適なメッセージを熟考することです。(了)

(記事提供者:アタックス 北村 信貴子)