グローバル化の波が中小企業にも広がりつつある昨今、移転価格税制が急速に身近な存在になってきました。
 移転価格税制とは、海外子会社との取引に際して意図的に取引価格を操作することによる「利益の付け替え」を規制するために作られたものです。

 ある会社が自社商品を海外子会社に通常の取引価格よりも低い価格で販売した場合、課税対象となる所得が減少し、法人税の納税額が少なくなります。こうした課税所得の海外移転を防ぐため、取引価格が一般企業同士における価格(独立企業間価格)に比べて不当に安い(または「高い」)と判断された場合、そこに課税逃れの意図があったかどうかに関わらず、独立企業間価格に計算し直して課税されます。

 当初は主に大企業がターゲットとされていたましたが、国際取引の拡大により中小企業にも波及。今やごく一般的な制度になりつつあります。とはいえ、独立企業間価格をめぐる国税当局との「見解の相違」によりトラブルに発展するケースも少なくありません。
 「見解の相違」の原因としては、独立企業間価格の算定方法が複数あるために企業と課税庁が採用する方法が違ってしまうケースや、同じ算定方法を採用した場合でも算定者の主観で大きく計算結果が異なってしまうことが挙げられます。

 こうしたトラブルを防ぐ方法として、企業が採用した独立企業間価格の妥当性について国税当局から〝お墨付き〟をもらう「事前確認制度」があります。しかし、確認の結果が出るまでにかかる時間は「平均2年」。相手国の課税庁からも確認を取る場合などはさらに時間がかかることもあります。取引規模が小さく移転価格課税がかかるリスクが少ないと判断した場合は、事前確認を取らないという選択肢も考えられます。
<情報提供:エヌピー通信社>