現在、購買の現場で、ICT(情報通信技術)やデジタル技術を梃子としたユニークな価値提供の取組みがなされています。

 資生堂が5月14日、東京・銀座にSHISEIDO THE GINZAをオープンさせました。そこで注目を集めているのが、仮想メークアップシミュレーター「10分先のワタシに出会える鏡――ミライミラー」です。店内に並ぶ口紅やアイシャドーのバーコードを読み取らせると、4色重ねやぼかしもOKで、店員に化粧してもらった自分の顔が目の前に現れるという優れものです。ほぼ全ブランドの商品2,000品目を実際に試せるため、クロスセル(購買点数の増加)が期待できるといいます。資生堂ブランドの全商品を、買う前に、実際に化粧してみることができるという付加価値は、消費者にとっては非常に魅力的でしょう。

 さらに、上記のようなユニークな顧客価値提供の事例を調べてみると、他業界においても面白い試みが見出せます。たとえば、クロスカンパニーのルミネエスト新宿店での「センサー内蔵ハンガーと組み合わせたデジタルサイネージ」が挙げられます。商品のかかったハンガーをモニターにかざすと、その商品を着たモデルの動画が現れ、内ポケットの有無などの特徴が紹介されるのです。自分が試着しなくても着用イメージが実感できる価値を提供しています。まさに、バーチャル・マネキンです。マネキン人形を薄いデジタルサイネージに切り替えれば、着せ替え作業が省けるうえに、売り場も有効に使えます。またさらに、ハンガーは顧客が触れた回数を記録できる点がミソで、触れた頻度から顧客の関心の高い商品を探ることもできるのです。(つづく)

(記事提供者:アタックス 西 公通)