厚生労働省が発表した平成22年度版の「人口動態統計」によると、昨年1年間で離婚した夫婦の数は実に25万1千組にも上るといいます。過去最高の離婚件数を記録した平成14年より4万件ほど少なくなっていますが、それでも、20年程前と比べると3~4割増の水準というから驚かされます。

 ところで、離婚する夫婦の最大の関心事として「財産分与」の問題があります。お金が絡む話だけに、互いに執着してしまい、なかなか解決にたどり着けないケースは多いようです。特に、財産の中に住宅が含まれていれば、それをどちらが取得するのか、住宅ローンの支払いはどうするのかなど、大もめになることも珍しくないはずです。
 嵐のような財産分与を経て、晴れて元妻が住宅を取得し、併せてローン債務を引き継ぐことになると、また新たな問題が出てきます。それは、「元妻が住宅ローン控除を適用することができるのか」ということです。

 税法では、①同居する親族から住宅を贈与された場合、②同居する親族から住宅を取得した場合――などのうち、贈与または取得後もその親族と同居を続ける時にはローン控除が適用できないことを規定しています。この点、財産分与は「贈与」ではなく、また、夫婦は既に離婚しているため、②の適用除外基準も満たしていません。そのため、このケースではローン控除が適用できることになります。

 なお、元夫名義の住宅を財産分与によって元妻が取得した場合、元夫は譲渡所得を申告しなければなりません。例えば、住宅の取得価額が3千万円で、財産分与時の時価が4千万円ならば、1千万円の譲渡益があったものとして夫に所得税が課税されます。逆に、分与時の時価が取得価額よりも低くなっていれば、その差額は譲渡損失として不動産所得や事業所得との損益通算が可能です。
<情報提供:エヌピー通信社>