(「オーナー企業だからこそ資金効率を意識した経営を1」より続く)

 株主は当然、当該企業よりも他企業の方が、配当が高いのであれば、当該企業より自分の持分である資金を回収し、配当が高い企業へ再投資をしたくなります。したがって、上場企業の経営者は、自社の魅力をアピールするためにも、このROEを意識せざるを得ません。

 この議論は、単に上場企業にのみ関連したことではありません。未公開のオーナー企業でも十分考慮すべきことです。未公開企業といえども、オーナー家は、自分の会社に株主として投資しています。株主である以上、このROEが高い方が良いに決まっています。

 7月2日の日経新聞によると、投資として比較的安全と思われる日本の新発10年国債の利回りは、1.14%でした。もし、貴社のROEが1%であったとすると、経済合理的には株主として投下している資金をすべて回収し(すなわち、会社を清算し)、すべて国債購入にあてれば、かなりの高い確率で0.14%だけ得をすることになるのです。

 算術的に会社経営の良し悪しを語るつもりはありません。しかしながら、これから右肩下がりの経済下での会社経営には、これまで以上にシビアな資金効率が求められるのは事実です。(了)

(記事提供者:アタックス 林 公一)