金融庁は金融機関からの報告を取りまとめ、「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」(モラトリアム法)に基づく最新の貸付条件変更状況を公表しました。

 モラトリアム法は、中小企業や住宅ローン債務者の借入金について、元本の支払期限延長などといった返済猶予を、債務者が金融機関に対して求めるための法律です。
 この法律で懸念されることは、一度返済猶予を申し込んでしまうと、金融機関から新たな融資を受けにくくなるのではないか、ということです。しかし、今回公表されたデータをみると、多くの中小企業や住宅ローン利用者が制度を利用していることが分かります。新規融資に対する懸念よりも、当面の返済猶予を重要視している実態が垣間見える結果だといえます。

 同法が施行された平成21年12月から23年3月までの借入条件変更の状況をみると、返済猶予の申込みを行った中小企業数は183万7988件。このうち返済猶予に至った「実行」は165万2961件、「謝絶」とされたのは4万6112件でした(その他に「審査中」と「(申込みの)取下げ」がある)。審査中と取下げを除いた実行率は97.3%と高い割合を占めており、中小企業からのほとんどの申し入れが認められていることが分かります。猶予総金額は45兆3849億円に上っています。

 また、住宅ローンに関して返済猶予の申込みを行ったのは16万7554件で、そのうち返済猶予が実行されたのは12万5721件、謝絶されたのは1万1892件でした。返済猶予実行率は91.4%と、こちらも9割を超える高い水準となっています。なお、モラトリアム法は本来23年3月31日までの時限立法でしたが1年間延長されているものです。
<情報提供:エヌピー通信社>