東日本大震災の被災者に重くのし掛かっている二重ローン問題を解消するため、政府は「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」を公表しました。被災者が事業や生活を復旧させるための足掛かりにすることが狙いです。

 ガイドラインでは、債務の全部または一部の減免が行われるまでの手続きのひとつとして、弁済計画案の作成が盛り込まれています。計画案に記載するのは、弁済できない理由と財産状況、債務弁済計画、資産の換価・処分の方針、債務の減免や期限猶予などを要請する場合はその内容。また、将来の収益による弁済で事業再建・継続を図ろうとする個人事業主の場合は、このほかに事業見通しや収支計画などをまとめる必要があります。

 被災した事業主が独力で弁済計画を作るのは難しいかもしれません。その場合は税理士、公認会計士、不動産鑑定士などの専門家で組織された「個人版私的整理ガイドライン運営委員会」の力を借りることができるとしています。通常の私的整理で3年以内とされている弁済期間は、ガイドラインでは「原則5年以内」とされています。期間延長は、甚大な被害を受けた被災状況を考慮したためです。

 ガイドラインで対象債権者としているのは、銀行や信用金庫のほか、農業協同組合、漁業協同組合、さらに貸金会社やリース会社、クレジット会社など。ガイドラインに法的拘束力はありませんが、当事者同士が自発的に遵守することが期待されています。
 なお、平成23年度の第2次補正予算では、二重ローン問題の対策費として774億円が計上されています。
<情報提供:エヌピー通信社>