大分県内の総合病院で、歯科患者の歯の詰め物に使われる貴金属を売却し裏金にしていたことが分かりました。この病院は2003年~2010年に150万円をプールしていました。詰め物一つひとつに使われる金属の量はわずかですが、文字通り「ちりも積もれば山となる」で、その売却益には国税当局も目を光らせています。
 歯科治療の際、金や銀、パラジウム、プラチナ、金・銀とパラジウムの合金(金パラ)など、詰め物の交換で除去した不要な金属が残ります。原則としてこの金属の所有権は患者にあるため、歯科医は患者に金属を持ち帰るかどうかの意思確認をするのが最も適正なやり方。しかし、たいていの場合は医院で処理するよう依頼されるため、患者とのやりとりは省略されている実態があります。

 歯科医院や歯科技工所では、これらの金属が一定の量になった時点で専門の業者に売却することがほとんどだといいます。個人が詰め物を売ってもさほど稼ぎが出るとは考えにくいのですが、何人分もの詰め物が集まる歯科であればある程度の収入になるというわけです。
 冒頭の歯科の裏金は、歯科が買い取り業者と取り交わした書類が病院の会計課に送付されたことで発覚したそうです。裏金の習慣が常態化していた事情には、患者との詰め物に関する話し合いが不透明なこと、そして金属の売却益が歯科医療に直接関わる事業収入ではないため目立たなかったことが挙げられます。

 このような収入の有無にも注目しているのが税務当局なのです。金属くずを大量に排出する製造業・建築業などが行うスクラップの売り上げ除外は、脱税の常とう手段。しかし、事業内容や規模から金属くずの量を予測し、買い取りの実勢価格から売却益を逆算することはそれほど難しい作業ではありません。金をはじめ金属価格が高騰しているだけに、この種の脱税への当局の動きは活発化するものとも考えられます。
<情報提供:エヌピー通信社>