(「中小企業の海外生産展開 その1」より続く)

 では、実際に海外生産を展開する場合には、どのように考え、実行していけばいいのでしょうか?

 中小企業は大企業と比べ、経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)においてさまざまな制約を有していますので、とりあえず海外に生産拠点を持ってみて困ったら撤退・移転すればいいなどといった安易な考えではこれら事業を成功させることはできません。

 例えば、他社では容易に真似のできない独自の技術を有する企業が海外に生産拠点を設ける場合で考えてみましょう。このような企業においては、独自技術を有する生産工程部分を海外に移転せず、他のどの部分を海外に移していくかを検討することをお勧めします。なぜなら、海外生産拠点では技術が流出してしまうリスクが国内よりも多く存在するからです。退職した従業員を通じてローカルメーカーにノウハウを盗まれるなど、意図しない技術流出により被害を被る例が多々見受けられます。また、独自技術を国内拠点に残すことで競争優位性を維持しやすくなるといった利点が発生するケースもあります。

 このため、中小企業が海外生産を図るうえでは、自社のもつ経営資源の特徴を把握すること、言い換えれば「自社の強み」が何かを充分に把握したうえで臨むことが大切です。そして、自社の強みに基づいて、どのような経営資源を海外拠点に移転し、どのような経営資源を移転せず国内拠点に残すかを戦略的に選択し、国内拠点および海外拠点を含めた全体の最適化を図っていくことが重要です。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)