TPP加盟に関しては、日本の農業を守るために加盟について慎重な意見がありますが、ここでは日本の農業を守るというスタンスではなく、新しい産業としてのビジネスの可能性について考えてみたいと思います。

 日本の農業は衰退傾向にあります。耕作放棄地は増え続け、農業従事者の人口は減り続け、従業者は高齢化が進んでいます。しかも農作物(穀物を含む)の輸入超過は5兆円規模に膨らんでいる状況です。

 しかし、逆にいえば、輸出国に対抗できる農業ビジネスが確立すれば、数兆円のビジネスが掘り起こされる可能性があると見ることもできるでしょう。産業化してコストを下げた高品質の国産農作物なら、輸送費のかかっている輸入品と十分に戦えるはずです。

 しかも農業は、観光や教育、医療といった他産業と協力することで、新たなビジネスを創出できる絶好のポジションにいるのです。たとえば、サービス分野を例にとれば、団塊の世代や若年ファミリー層に人気の市民農園や貸し農園が有力です。定着率の低さが課題となっていますが、農業サポーターを配置するなど、サポート体制を充実させていけばアグリビジネスの産業化を後押しする有望市場へと成長していく可能性があります。

 また、インターネット販売や宅配などによる産直市場も伸びが顕著となっています。インターネット上で、大きさが不ぞろいの規格外の農産物や包装ラベルのミスによって出荷できなかった農産物などを取り扱う、いわゆる“わけあり市場”がブームとなっています。これは、供給者サイドの常識と消費者ニーズとの“ズレ”に商機を見いだした最たる例といえます。(つづく)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)