安倍晋三首相が「予定通り」の消費税率引き上げを発表したことに合わせて、自民・公明両党による与党税制改正大綱が明らかになりました。通常は年末にまとめる税制改正大綱ですが、政府の成長戦略に合わせて投資減税策の部分を秋に前倒しして決定したものです。

 焦点となっていた「復興特別法人税」を1年前倒しして廃止することについては、「被災地の方々の十分な理解を得ること、および復興特別法人税の廃止を確実に賃金上昇につなげられる方策と見通しを確認すること等を踏まえたうえで、12月中に結論を得る」と結論が先送りになっています。

 復興特別法人税は、東日本大震災からの復興費用をまかなうため、平成24年度から3年間、法人税額に10%を上乗せするもの。これを1年前倒しして廃止することで、約9千億円の税収減になります。「前倒し廃止」を主導したのは、企業に近い立場の経済産業省でした。復興特別法人税をなくすことで法人税の実効税率の引き下げを早期に実現したい思惑があります。

 これに対して、自民党内を含む与党は反発。「被災地の皆さんにどうやって説明するのか」(大島理森・自民党東日本大震災復興加速化本部長)など、被災者の感情面への配慮を求める声が多く出されました。政府内も一枚岩ではなく、麻生太郎財務相は「人件費や給料のアップにつながる保証が見えず、下げた分が内部留保に回るならば世間の理解は得にくい」と否定的。また、公明党の反発も強く、最後まで与党内の調整はもつれました。「復興増税の前倒し廃止は野党の突っ込みどころ満載だ」(公明党幹部)と、早くも政府の国会運営を危ぶむ声も挙がっています。
<情報提供:エヌピー通信社>