わが国の中小企業において、経営者の高齢化の進展などを背景に事業承継が課題となっています。事業承継において重要となるのが後継経営者の選定ですが、中小企業において最も一般的なのが、実子(息子、娘)、配偶者、兄弟、娘婿などといった親族内の人物から後継者を選定する親族内承継です。

 親族内承継のメリットについてみていきますと、第一に社内外の関係者から心情的に受け入れられやすい点があげられます。例えば、現経営者の長男が事業を承継するのが典型的な例ですが、この場合従業員や、取引先、金融機関などから、長男が事業を承継することに関して正統性の確保が容易となるため、事業承継後も従業員などの人心の掌握が容易になるなどのメリットが得られます。

 第二に、後継者を早期に決定することができるため、後継者教育のための長期の準備期間の確保が可能となる点があげられます。後継者の育成は事業承継の課題の中でも最も重要なものの一つですが、親族内承継の場合、後継者候補が会社に入社する前から後継者を教育することも可能になります。

 そして第三に幼少期の経験、先代の下での勤務経験等により一族の経営理念・社訓が自然に浸透しやすい点があげられます。

 一方で、デメリットについてみていきますと、第一に親族内に経営の資質と意欲を併せ持つ後継者候補がいるとは限らない点があげられます。この場合、親族内承継に固執すると却って事業を悪い方向に導いてしまうことも考えられます。第二に、相続人が複数いる場合、後継者の決定や経営権の集中が難しい点があげられます。(つづく)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)