節税には大きく分けて、買う節税と売る節税があります。減価償却資産の購入は典型的な買う節税です。買う節税では減価償却費と金利で税金は減少しますが、資産購入に伴うキャッシュアウトがあることを見逃してはいけません。

 一方、売る節税の損得計算はとても明確です。たとえば、含み損を抱えた遊休資産の売却を考えてみましょう。簿価100の土地の時価が60だったとします。したがって、含み損が40あります。この土地を売却して節税するときのキャッシュフローは次のようになります。時価60で売却するのですから、含み損が実現損に変わり、売却損失40が発生します。実効税率を40%とすると、税額は16減少します。キャッシュフローのプラスはこれだけではありません。資産そのものの売却額60もプラスのキャッシュフローを生み出しますから、合計のキャッシュフロープラスは、税額の16と売却代金60を合計した76になります。このように、含み損を抱えた資産の売却に伴うキャッシュフロー計算は明確です。

 節税を考えるときには直接に減少する税金だけを考えるのではなく、その節税行為全体のキャッシュフロー計算が重要であること、及び、節税には買う節税と売る節税があり、買う節税のキャッシュフロー計算は不確定なのに対し、売る節税のキャッシュフロー計算は明確だということがいえそうです。節税の明確な第一歩は、将来のキャッシュフロー収支の不透明な設備投資ではなく、含み損のある資産の整理だということを再認識したいものです。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)