持分法では関連会社の資産・負債は連結財務諸表に表示せず、関連会社の計上した利益だけを持分法投資損益として取り込みます。ところが、全部連結は子会社の資産・負債を連結財務諸表に表示します。ここで重要なのは子会社の負債が連結財務諸表に載ることです。

 連結財務諸表とは親会社の株主に対する財務報告です。全部連結では、親会社は株主に対して「子会社の債務は自分自身の債務である。すなわち、親会社は子会社の債務に責任を持つ」と表明したことに他なりません。法律的には株主有限責任に基づき、親会社は子会社の債務までは面倒はみないという議論は成り立つでしょうが、連結財務諸表の債務として表示したことで、会計的には親会社にとっても自分の債務だと認識したことになります。この段階で親子会社は実質的に一蓮托生の運命共同体になります。

 ところが、関連会社の債務は連結財務諸表に表示されません。ということは、親会社は関連会社の債務に責任を持たないし、関連会社は親会社と命運を共にすることはありません。

 つまり、子会社になるかどうかの本当の真意は「この会社は親会社と一蓮托生」かどうかにあります。その会社が親会社にとって必要不可欠な会社で、その債務まで親会社が面倒をみなければならない会社だと判断すれば、子会社になるまで株式を購入し、全部連結で子会社債務を連結財務諸表の債務として表現します。子会社になるかどうかは、株式所有比率の結果として自然に区別されるものではなく、その背後に対象会社と命運を共にする強い親会社の決意が存在しているのです。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)