■成功は失敗のもと、但しトップ次第だが
~販売が厳しい時は、マーケティング型が先頭に立て~
製造&販売企業の経営トップの心得
衛生陶器メーカーのT社で感心させられることは、経営環境、特に販売環境の変化により、最適人事を求めて、経営トップが柔軟に入れ替わることである。つまり、販売が好調で競合環境も穏やかなときは、製品の製造や技術的な面に詳しい人がトップになり、技術や製品そのものの開発改良に取り組むのだ。一般に理系のトップが多いようだ。
ところが、販売環境が非常に厳しい。もちろん競合環境も、激甚模様という情勢のとき、タイムリーに、販売に強いマーケティング型の人が経営トップに就くのだ。
〈頭の向きが変わらなきゃ、尻尾の向きも変わらない〉とは、生き物の本質である。経営もまた、生き物であることを考えると、なかなか含蓄に富んだ話である。
しかし多くの企業ではオーナー経営の特性である専決経営を、そう簡単に変えることは考えられない企業が多い。
そこで経営トップ自身が、環境の変化に柔軟に対応して、みずからの体色を変化させる“カメレオン型の経営者”に変身することが求められる。
たとえば反面教師として、味の素と提携前の昔のカルピス飲料(コンク)を考えてみよう。
カルピス一本に絞った単品経営が災いして、経営は破綻に直面した。カルピスへの自信のつもりだったが、じつはカルピスへの“依存経営”そのものだったのである。
ところが味の素という他人の目が、経営を見るようになるや、「現代は、コンビニ(便利志向)の時代。薄めて飲めという回りくどい飲み方でなく、そのまますぐに飲めるものを売りなさい」という意思決定が働くようになり、生まれた「カルピス・ウォーター」が大ヒットして、業績は見事に息を吹き返したのである。
●ノルウェイの漁師とサントリーが教えるもの
コンク(濃縮)を、ウォーターに変える。ただそれだけのことで、旧来のカルピスは見事に甦ったのである。新しい視点が、経営を照らすようになったからこそ、できたことである。
ところが、“ただそれだけのこと”が、執着心や固形思考に片寄っていると、なかなかできないものである。失敗は成功の母でもあるが、“成功は失敗の母”でもあるのだ。
日本が多くの鰯を輸入する国にノルウェイがある。この国の漁港で仲間の話題になった漁師がいたそうだ。「彼が捕ってくる鰯は、ピンピンしてるぞ!」というのだ。
じつは彼の秘訣は、“船底の生けすに、鰯の天敵であるナマズを前もって入れておく”というものだった。鰯は緊張して動き回るから、ピンピンしたまま水揚げされ高値がついた。
経営組織にも、仲良しチームに慣れ親しんだ者だけでなく、ナマズが必要なようだ。
“和の精神”そのものはいいことだ。しかしややもすると和の精神は、簡単に“仲良しチーム”に変質することが多い。この精神は、経営の発展を大きく阻害する。
仲良しチームになると、組織から野性味が消え、善し悪しに関係なく、現在の調和を乱す意見を排除するようになる。建設的なブレイクスルー(限界突破)というものは、一時的には現在の調和に波乱を巻き起こすものだが、それを敬遠するから、やがて経営体は、じり貧への道をたどるようになる。
サントリーは、社長が佐治敬三さんのとき、ビールづくりを始めた。
「ウィスキーさえ作っていれば安心という依存心が、慢心を生み危ない。ビールは赤字だが、当社にとっては健全な赤字です」と語った社長だったが、いま立派に利益として開花した。
過去の成功への依存は危ない!危ない! 御社は大丈夫ですか?
製造&販売企業の経営トップの心得
衛生陶器メーカーのT社で感心させられることは、経営環境、特に販売環境の変化により、最適人事を求めて、経営トップが柔軟に入れ替わることである。つまり、販売が好調で競合環境も穏やかなときは、製品の製造や技術的な面に詳しい人がトップになり、技術や製品そのものの開発改良に取り組むのだ。一般に理系のトップが多いようだ。
ところが、販売環境が非常に厳しい。もちろん競合環境も、激甚模様という情勢のとき、タイムリーに、販売に強いマーケティング型の人が経営トップに就くのだ。
〈頭の向きが変わらなきゃ、尻尾の向きも変わらない〉とは、生き物の本質である。経営もまた、生き物であることを考えると、なかなか含蓄に富んだ話である。
しかし多くの企業ではオーナー経営の特性である専決経営を、そう簡単に変えることは考えられない企業が多い。
そこで経営トップ自身が、環境の変化に柔軟に対応して、みずからの体色を変化させる“カメレオン型の経営者”に変身することが求められる。
たとえば反面教師として、味の素と提携前の昔のカルピス飲料(コンク)を考えてみよう。
カルピス一本に絞った単品経営が災いして、経営は破綻に直面した。カルピスへの自信のつもりだったが、じつはカルピスへの“依存経営”そのものだったのである。
ところが味の素という他人の目が、経営を見るようになるや、「現代は、コンビニ(便利志向)の時代。薄めて飲めという回りくどい飲み方でなく、そのまますぐに飲めるものを売りなさい」という意思決定が働くようになり、生まれた「カルピス・ウォーター」が大ヒットして、業績は見事に息を吹き返したのである。
●ノルウェイの漁師とサントリーが教えるもの
コンク(濃縮)を、ウォーターに変える。ただそれだけのことで、旧来のカルピスは見事に甦ったのである。新しい視点が、経営を照らすようになったからこそ、できたことである。
ところが、“ただそれだけのこと”が、執着心や固形思考に片寄っていると、なかなかできないものである。失敗は成功の母でもあるが、“成功は失敗の母”でもあるのだ。
日本が多くの鰯を輸入する国にノルウェイがある。この国の漁港で仲間の話題になった漁師がいたそうだ。「彼が捕ってくる鰯は、ピンピンしてるぞ!」というのだ。
じつは彼の秘訣は、“船底の生けすに、鰯の天敵であるナマズを前もって入れておく”というものだった。鰯は緊張して動き回るから、ピンピンしたまま水揚げされ高値がついた。
経営組織にも、仲良しチームに慣れ親しんだ者だけでなく、ナマズが必要なようだ。
“和の精神”そのものはいいことだ。しかしややもすると和の精神は、簡単に“仲良しチーム”に変質することが多い。この精神は、経営の発展を大きく阻害する。
仲良しチームになると、組織から野性味が消え、善し悪しに関係なく、現在の調和を乱す意見を排除するようになる。建設的なブレイクスルー(限界突破)というものは、一時的には現在の調和に波乱を巻き起こすものだが、それを敬遠するから、やがて経営体は、じり貧への道をたどるようになる。
サントリーは、社長が佐治敬三さんのとき、ビールづくりを始めた。
「ウィスキーさえ作っていれば安心という依存心が、慢心を生み危ない。ビールは赤字だが、当社にとっては健全な赤字です」と語った社長だったが、いま立派に利益として開花した。
過去の成功への依存は危ない!危ない! 御社は大丈夫ですか?