●分析のための分析でいいのか

以前、「カウンターを乗り越えよう」を合い言葉に、飛躍しているA社を紹介した。

その反面、営業幹部会議と言いながら「分析のための分析を繰り返す」と、言わんばかりのB社を紹介しよう。会議の名称は、「営業戦略会議・・」とモノモノしいのだが。

まず会議は、参加者に事前に資料を提出させることから始まる。A4用紙でざっと10枚以上が求められる。本社の担当者の仕事は、その資料の督促から会議は始まっている。

さて、恒例の会議が始まると、まずページ合わせから始まる。これが30分はかかる。

さていよいよ発表だ。各営業所の発表が続くが、字句のミスがあると注意を受けるので皆も用心している。特に前年より実績が下回っていると、「なぜ下回ったのか」という理由を述べねばならない。これは当然と言えば当然だが。問題は指摘される点が“取るに足らない点”が多いのだ。たとえば、「担当者が変わったものですから・・」という理由を述べると、「新しい担当者の名前は?」とか、「その程度は前もって知ることはできなかったのか?」というように枝葉末節に類することばかりが社長から発せられるのである。

「きみ自身に、早く知ろうという意識がなかったのではないのか」と指摘されることもある。

こんな調子で、貴重な一日は浪費する時間とともに過ぎ去っていくのである。

「自分たちは、計数を駆使して科学的な営業戦略会議をやっている」という自己満足型だ。

 

●新しい得意先を掘り起こせ

要するに会議が死んでいるのだ。死んだ会議に成果は表れない。

なぜこうも会議の本質を無視した遊びを繰り返すのか。考えてみると思い当たる。

このB社は、もともとベルトの繋ぎ金具で成長してきたのである。この社長の先代が、骨身を削るようにして繋ぎ金具を開発したのである。時代は長いベルトが、どこの工場でも見られたものである。長いベルトがあれば、当然のように繋がねばならない。繋ぐためには金具が欠かせない。その金具を開発し、特許防衛に成功したのである。

というワケで会社はベルトの金具さえ扱っておれば、売上は順調に伸びたのである。

ところがこの姿勢で幾世紀かを経ると、得意先を開拓する気概も失い、ただ漫然と下請けに甘んじて、「カウンターを乗り越えよう」という基本姿勢を無くしてしまったのである。

また時を経て、革新的な金具も開発され、厳しい競争の世界を経験することになる。

そう言えば社長から、「開拓」という言葉は一度も聞いた記憶がない。

いかなる業種や業態においても、開拓をしないで既存の客だけを相手にしていれば、必ず得意先は減少するものだ。倒産、合併、吸収・・などのために減るものだ。

こうやって、外には時代に合った新しい金具の出現に因る競争の激化。

内には、開拓を忘れた気迫に欠けた惰性集団化した組織の沈滞。

こうやって組織は次第に、負け犬根性に堕落していくのだった。

サントリーという会社は、ウイスキーが赤字の頃は、「あえて追いつき追い越せという目標を立てて頑張る」という会社である。そういう精神が欲しかったB社である。