昔、中国の杭州(現在の浙江省)に「道林」という名僧がいたそうだ。よく松の木の上で座禅を組む僧としても有名で、別名「鳥窠禅師」とも呼ばれるほどの有名人。 

ある日詩人の「白楽天」が、人としての道を尋ねた。返事はこうだ。

「諸悪莫作 衆善奉行」

「悪いことはしないこと。善いと思ったことは果敢に実行すること」と答えたという。白楽天はこの言葉を聞いた途端、思ったそうだ。

「な~んだ、そんなことなら三つ四つの子供だって知っている・・」

こんな思いが白楽天を襲ったのを知ってか、鳥窠禅師はさらに言葉を継いだ。

「この程度のことは、おまえも思っているだろうが、三つ子でさえ知っている。だが白楽天よ分かっていても、この当り前のことが実行できないが為に、人生を棒に振る者が多いことは、きみも知っているではないか。言うは易しだ。しかし実行するとなると、八十の年輪を刻んだ人生の達人でさえも至難のことなのじゃ」

じつはこの当時、白楽天は杭州の知事だった。当時も役人の汚職が少なくなかったことから、この言葉は身にしみたという。

この鳥窠禅師の言葉は、そっくりそのまま現代にも当てはまるみたいだ。

知っていることと、実行できることは、大違い!