原価をどう捉えたらいいのか
●原価はこのように考えよう
原価が低ければ低いほど、利益は確実に手にすることができる。では原価はどう捉えたらいいのだろうか。それでは原価が上昇する原因を考えて見よう。
1、時間がかかる仕事ほど原価は上昇。
2、人が増えるほど原価は上昇。
3、やり直しの多い仕事ほど原価は上昇。
4、距離が長くなればなるほど原価は上昇。
5、仕入れが高くなるほど原価は上昇。
6、手遅れの仕事が多いほど原価は上昇。
7、時間外の仕事が多いほど原価は上昇。
8、販売に時間がかかるほど原価は上昇。
9、水や電気(水道光熱費)を多く使うほど原価は上昇。
10、仕事の手間が増えるほど原価は上昇。
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こうして仕事を分解して考えると、原価の落とし方がわかる。
例を示し、考えてみよう。
ある商品出荷作業場のことである。広い板の間が広がっている。ところが出荷関係者に頻繁に電話がかかってくる。出荷事務所は作業場から離れているので、「佐藤さ~ん、電話」と呼ばれると、「は~い、ただいま」と言いつつ小走りに走って行くことになる。
この現場の様子をじっと見ていた場長が、作業場の中央にある柱に着目した。
そして、出荷作業場の呼び出し電話を柱に取りつけた。
それ以来、「佐藤さ~ん、電話」も、「は~い、ただいま」という会話も、現場から消えた。
つまり、遠い距離を往復して駆け回る姿は消えた。
そのぶん出荷作業は効率が上がった。つまり原価が低減した。
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●旅館も距離が生命線
もう一つ例を示す。旅館のことである。
その旅館は、離れの間が多く、料理を運ぶのも大変な労働である。
しかしこれに注目する者はいない。それでいて利益は少ない。(原価が高い)
そこで経営者は、調理場の移設を実行した。
するとどうだろう、今までは、「熱い汁物」も長い距離を運ぶので、すっかり冷え切ってしまっていた。冷たい物は生温かくなっていた。これが「熱い物は熱いうちに」、「冷たい物は冷たいうちに」、召し上がってもらうことが可能になった。従業員の人数も減り、客も満足である。
こうやって、旅館は倒産の危機を回避できた。
しかし当事者になると、「なぜこんなことに気付かないんだろう」ということが多過ぎる。
理由は、「全員が作業に夢中になっている」からで、じっと現場を見ている人がいなかった。
管理者・経営者の仕事とは、汗を流すことではなく、知恵を出すことである。