“バッドニュース”に気配り
アサヒビール飛翔の起爆剤になった製品は、「スーパードライ」ということは、多くの消費者も知っています。
当時の経営トップは、銀行経営者から転じた樋口広太郎さん(現在、名誉会長)でした。
この樋口さんはしばしば、「バッドニュースが、経営トップの耳に入らなくなったら、経営は必ず傾く」ということを語る人でした。大勢の経営者を前にすると、必ずといっていいくらい強く訴えた人でした。
バッドニュース。言うまでもありません。経営に悪影響をもたらす情報のことです。
古典に類しますが、ナポレオンの話です。ある深夜最前線から、伝令が早馬で報告に来た、ということです。
その報告内容は、わが軍は連戦連勝で進撃中という、じつに耳障りのいい内容だったそうです。
ところがナポレオンは、伝令に強くいい含めて、前線司令官のもとに帰したそうです。
「良い報告はゆっくりでいい。悪い報告こそ、深夜といえども時機を失せず報告せい」
ところで明治安田生命の、保険金不当不払に関する新聞記事は、途絶えることなく掲載され続けています。
最近のある新聞の大見出しは、「社長直通へ体制改革中」というもので読者に迫っていました。
何のことはない。顧客から山ほどの苦情が寄せられていたにかかわらず、社長には一件の苦情さえも届いてはいなかった、という記事です。(届いていたら、顧客苦情にそって解決していたかは不明だが?)
保険会社の社長にも、アサヒビールの樋口さんや、ナポレオンのような考え方(危機管理意識)があったなら、顧客からの苦情は必ず報告せよというトップの意志を、全社員に浸透させていたはずです。
つまり、保険会社の社長には、そういう意識は完全に欠落していたということでしょう。