M自動車の“上が上なら下も下”
●上が上なら下も下
ある人がM自動車からの依頼で、傘下ディーラーの研修を実施したことがあった。
そこで不思議なことに気づいた。会社の敷地に出入りする車の多様性である。トヨタあり三菱あり、いすゞがあるかと思えば、富士重工のスバルがあるという状況である。
トヨタではトヨタ車以外は出入り禁止である。当然のことではある。だから、普段トヨタ車以外に乗っている人間も、トヨタ車を借りて出入りしていたものである。
要するに、敵を見る目も味方を見る目も漠然としているのだ。
こんなこともあったそうである。デボネアという車に乗っていた人が、M自動車ディーラーの整備工場に定期点検に出した。どんな具合かなと思い整備工場に立ち寄った。そしてびっくり仰天。
なんと工具類をボンネットの上に、直に置いているではないか。
注意したら、そそくさと取り去ったという。
●大株主はどう動くか
さらにこの車が、整備工場から戻ってきた。
翌朝のこと、車の下に油が溜まっている。「なぜだろう」と思い覗いてみたら、オイルパンの栓が締めてないのである。
もし知らないまま乗り続けていたら、車の命であるエンジンが焼け、とんでもない事態が起こっていたはずである。
整備工場は平身低頭で謝ったが、それ以来ずっと、「M自動車には、油断もスキも与えてはいけない」という思いにかられ、ついにはトヨタに切り替えたそうである。
いまM自動車のリコール隠しや燃費不正問題が露見して以来、あれこれ指摘されているが、上が上なら下も下、という気がしてならない。
何しろ倫理観がないのである。職業倫理なるものの欠如である。
新聞で見た報道だが、「何十年も前からやっていた」というが、本当だと思う。
そのデボネアのハンドルが、真っ直ぐ停止したのに真正面を向いていなくて、やや斜めになっていたので、矯正するように要求をしたことがあるそうだ。
そのときの態度が、「なんと細かなことを言う客か」という受け止めだったという。
すべてが、いい加減なのだ。甘いのである。
職業倫理がこんなでは、いつかはさらに大きな問題を起こすに違いない。
法令とは異なる方法で、言い換えれば自分のご都合主義で、燃費を決めていては、わがまま勝手と言われても仕方ない。なお大株主は、1位が三菱重工、2位が三菱商事、3位が三菱東京UFJ銀行である。