トップに求められる文章起案力
ニッサン(日産自動車)の社長に就任したカルロス・ゴーンさん。
日本に赴任して半年経つか否かというときに、「トップの意思を全社員に伝えるために、社内報の発行を決めた」と聞いた。
「ええっ、本当なの・・・?」
と思った。とっくにあるものと思っていたからだ。
それがなかったのである。
「孫子の兵法」には、つぎの一文がある。
「衆を闘わしむること、寡を闘わしむるがごとくなるは、形名(けいめい)これなり」
意味は、つぎのようになる。
「多くの軍隊を指揮して戦わせるときでも、わずかな軍勢を動かすときのように、指揮官の手足のごとく思いのままに組織を動かすのが、指揮官の能力というものだ。左右するのは意思の疎通である」
つまり、トップの意思がどれだけ組織全体に行き届いているかということだ。トップの言うことと、末端の言うことが変わりない、というほどの意思の伝達能力のことだ。
だから当然、トップに問われるのは、文章起案力である。その社内報は、世界史を例にひいた一文で、魅力あふれるものだったそうだ。