異見に耳が傾くようなら一流の証拠
●黒田長政と異見会
多くの人は、自分と同じ考え方や、自分と似た意見の言葉に、耳が傾くものである。自分と共感できるアンテナの持ち主と思うからであろう。
しかし同時に、成功した起業家と失敗した人を比べてみると、おもしろいことが分かる。
それは経営陣の中に、トップに対して、何の異論も言わない人ばかりだと、ほとんどの組織が潰れていることである。むしろ異見が取り入れられる組織は健全なようである。
九州博多の黒田藩の基礎を作った黒田長政が、「異見会」という定例の重臣(幹部)会議を開催していた話を紹介しよう。
重臣ではなくとも、是非、藩のために意見があれば、前以て願い出れば、参加できたというから、いかに民主的な運営をしていたかがわかる。
その会議には、次の掟が定められていたそうだ。
(1)どんな意見に対しても、腹を立てぬこと。
(2)会議内容をいたずらに、他言しないこと。
(3)互いの意見に対して、恨みを抱かぬこと。
なかなか出来ることではない。しかし、現代でも成長する組織は似たところがある。
そう言えば、建設素材でも同じことが言える。たとえば、コンクリートである。
コンクリートは性質の異なる、セメント・小石・砂利を水で混ぜることにより頑丈さを増す。それぞれが異質の性質を有するからだ。
松下幸之助さんは、加藤大観という僧籍を持つ人を、自宅に住まわせ大事にしておられた。
ある日、経営に関する意見を求めたら、なんと幸之助さんとは反対の意見をおっしゃった。
このことを、自分の語録として残しておられる。
「加藤先生は、自分の意見とは逆のことであった。
ところがその意見を分析して、自分の意見に加えると、ちゃんとした正論として成立するのである。いたずらに反対意見だからと言って、取り入れないのは如何なのか。」