全国規模の「TQC活動」が生産性を落とす
●「TQC」という言葉が企業を襲う
いまから20年ほど前だが、「TQC」という言葉が、全国的に各企業を襲った。
QCは品質管理の意だが、これにT(トータル)を加えて、全社的な品質管理の意味で、とにかく、どんな物にも品質はある。営業ならば“営業の品質”、生産ならば“作る物の品質”がある。経理や財務なら“経理や財務にも品質”がある、というわけである。
「おたくはTQCやってますか」というセリフが、挨拶がわりになった時代がある。特に第一線で活躍する従業員を主役にすることから、「TQCサークル活動」をさしていた。
A社の社長の息子が、このTQCに惚れて、生産部門のTQCサークル活動に燃えたことがある。しかし、半年やった結果は次の社長の言葉に要約されていた。
「何やら得体の知れないTQCサークル活動で、確かに時間は早くなったと思うが、浮いた時間の使い道を考えていなかった。結局は休憩時間を増やしただけだった」
やはり社長は、本質をよく見ていたものだ。
ある観光バスの会社の話である。
銀行に融資を申し込みに伺ったところが、こんな条件をつけられた。
「いまTQCサークル活動が盛んだって。おたくでもやったらどうですか。そうだ、TQCサークル活動を融資の条件にしましょう・・」
こんなわけで、なんとTQCを融資の条件にされたことさえある。笑い話のようだが実際にそんなこともあった。おかしくて変なTQCである。
●大流行病に犯されるな
かと思うと、「異業種交流の会」という変なものもある。
あるコンサルタントが、顧問先の会社が岡山にあり訪ねた時のことである。駅に迎えに来ていたのは社長。そして、「今から異業種交流の会に行きます」と言う。
一緒に行くことになった。加わってみての感想だが、「何の役にも立たない」と言った。
というのは、「新製品情報が手に入る」というものだったが、誰が秘密にしたい新製品の情報を部外者に話すものか。案の定、取るに足りない話ばかりである。
これは当時の通産省の誰かが、言い出したようだ。
とにかく日本では、「これは生産性の向上に役に立つぞ」という声が上がると、まるで乗り遅れしないように、猫も杓子も、それっとやり始めるのである。
一種の「大流行病」である。当時のトヨタの下請けがやると、「トヨタ式なんとか」と本に書いた者さえ現れるのである。おかしな国日本である。