上場経営には“明”あれば“暗”もある
●「上場やめます」という会社も出現
神戸のワールドという会社は、女性用服飾品のアパレル卸(縫製メーカー)です。
この会社は、「当社は上場を取り止めます」といって、自社株を買い戻すことを決めたそうです。
もちろん、「上場経営より、非上場経営がいい」という判断が働いたからでしょう。
上場経営には、株式を公開することで、広く資金調達がしやすいとか、金融機関が経営者に個人保証を求めずして融資するとか、いい面があるでしょう。
さらに、「上場会社」というステイタスも、特に経営者には魅力的らしい。
しかし何事にも、日の当たる面もあれば、日陰の部分もあります。企業買収(乗っ取り・マネーゲーム)のターゲットになるのも、上場企業だからです。
●一兆円企業でも上場しないという哲学
ある大手ゼネコンにT社があります。04年の年商はほぼ一兆円です。しかしこの会社は、昔からずっと上場していません。非上場会社なのです。
なぜなのでしょうか。
品質経営という方針を徹底するためには、株価の上下に一喜一憂していては、平常心の邪魔になります。
この会社の人事管理も独特で、労働組合がないかわりに社員組合があります。労働組合を作られる前に、会社が積極的に動き、社員組合を作ったのです。
勉強不足の人のなかには、上場会社が非上場会社より格が上(従業員も質がいい)という驚くべき浅薄な認識の人がいますが、そんなことはありません。
●時流も上場感覚も変わった
「会社を上場しました」といって、心躍るような挨拶状をいただくことがありますが、この事実を裏返せば、「いつマネーゲームの対象になっても、おかしくない会社になりました」という意味でもあります。
冒頭に紹介したワールドと同様、自社株を買い取り非上場になる、MBO(マネジメント・バイアウト)を志向する会社はもっと増えるかも? 上場環境も変わりましたね。