今回は、公益認定ではなく、一般認可の話です。

特例民法法人から一般社団・一般財団法人に移行する際には、多くの法人が「非営利型の一般法人」を選んでいる傾向があります。

実は、この「非営利型」。公益法人制度の話ではなく、あくまで「法人税法上」の話です。つまり、内閣府や都道府県に申請書を提出する際に、「非営利型」を選ぶ、ということではありません。

具体的には、おもに定款に一定の記載をすることにより、特に届出等をすることなく、法人税法上の「非営利型の一般法人」と位置付けられます。つまり、法人側が「うちの法人は非営利型一般法人です」と届け出たり、申請したりするわけではなく、形式的に一定の要件を満たしていれば、自動的に「非営利型の一般法人」になる、という点が注意点です。言わば、税務署が決めるわけです。

また、「非営利型の一般法人」が多く選ばれるのは、これが、「収益事業課税」という方式で法人税の計算ができるからです。

特に、会費を集めてそれを使って様々な事業を行っている社団法人、多額の基本財産の運用益を使って事業を行っている財団法人、これらの法人は、どうしても「収益事業課税」にした方が、法人税額が少なくなる傾向があります。なぜなら、この課税方式では、「会費」や「運用益」「寄付金」は、法人税法上の収入とはみなさないからです。

ところが、すべての特例民法法人が、「非営利型一般法人」を選んだ方が、法人税が少なくなるのか、というと、そういうわけではありません。

私が一般認可のセミナーをするときは、いつもこの話をするのですが、実際の例を扱ったことはありませんでした。
ですが、先日、内閣府の相談会で、ちょうどこの実例に出会ったのです。

その団体は、保有している土地の賃貸収入をもとにして、公的施設の管理をしていました。不動産の賃貸は、法人税法上の収益事業です。その賃貸収入は当然、法人税法上、収益に計上されます。

一方、その賃貸収入の経費はというと、固定資産税、山林管理費程度しかありません。管理費を案分しても、かなりの所得が発生してしまいます。それでも今までは、みなし寄付金制度がありましたので、法人税を低く抑えられていたのですが、今回の一般法人には、このみなし寄付金制度がありません。常務理事さんは、顧問税理士さんから試算してもらって、年間数百万の税負担の増加に、「もう解散するしかないか」とさえ考えておられたようです。

結論から申し上げれば、この団体は、まあ法人税の負担だけについて言えば、「普通法人型の一般法人」を選択することで、問題はクリアできるはずです。

「普通法人型」は、一般の会社とまったく同様に法人税の計算をする、ということです。つまり、すべての収益とすべての費用をひっくるめて所得を算出します。そうすることで、多額の土地賃貸収入を、公的施設管理経費や事務局管理費でカバーすることができ、少なくとも、年間数百万の税負担の増加、ということにはならないと思われます。

内閣府の相談会は、一回50分ですので、詳しい税金計算まではできず、「顧問税理士さんにちゃんと計算してもらってくださいね」と申し上げましたが、少なくとも税負担の劇的な増加はないということで、理事さんは大変安心された様子で帰られました。

もちろん、「普通法人型の一般法人」でも、申請の提出に関しては、「非営利型」となんら変わるものではありません。公益目的支出計画も同じように考えます。

一般法人というと、すぐに「非営利型」と思われるかもしれませんが、上記のような例もあります。定款変更案を作成する際にも注意が必要です。移行申請には、実務に慣れた専門家の相談をお受けになることをお勧めします。

注意
今回の話は一般的な例です。移行時の調整などの問題で、税負担は変わってきますので、顧問税理士さんによく相談するようにお願いします。