『定額給付金』は経済対策として有効か?
投稿日:2008年11月17日月曜日 09時41分14秒
投稿者:税理士 溝江 諭 KSC会計事務所 カテゴリー: General
2008年11月7日
札幌市豊平区の税理士 溝江 諭(みぞえさとし)です。
公明党が経済対策の一環として打ち出した「定額減税」。それがいつの間にか「定額給付金」へ変貌してしまいました。「定額減税」は、本来納税額がある人だけがその恩恵を受けますが、「定額給付金」は納税額がない低所得者の人にも給付されるものです。自民党内では、1999年の「地域振興券」のように予算のバラマキに終わる可能性が高いため、当初、導入には反対の意見が優勢だったようですが、衆院総選挙が現実的な視界に入ってくると、にわかに態度を急変、経済対策への取り込みが行われました。
経済対策に有効かどうかは、「景気を上昇させる効果があるのか」、または「これ以上の景気の低迷を抑えるのに有効であるのか」によります。
定額給付金をこれらの視点から検討すると、景気を上昇させる効果があるとは思えません。例えば、1999年の地域振興券では、支出額約6千2百億円、これに対して経済効果は2千臆円といわれ、景気を上昇させることはできませんでした。
では、景気の低迷を抑えるのに有効だったかと言うと、先のとおり、支出額のほとんど4千億円が日用品の購入や貯蓄に充てられ、その効果が僅かしか認められませんでした。
どうして地域振興券は景気対策に役立たなかったのでしょうか?
ここをしっかり検証しなければ、今回の定額給付金の良否は判断できません。
地域振興券は主に次のような世帯へ、一人当たり2万円が交付されました。
・15歳以下の子供のいる世帯主。
・老齢福祉年金、障害基礎年金、遺族基礎年金、母子年金、準母子年金、遺児年金、児童扶養手当、障害児福祉手当、特別障害者手当の受給者。
・生活保護の被保護者、社会福祉施設への措置入所者。
・満65歳以上で市町村民税の非課税者(課税されている者の税法上の被扶養者を除く)
予想もしていないお金が手に入ることは嬉しいことに違いありませんが、だからと言って、そのお金をすべて今までとは違った不要不急なもの(例えば、ぜいたく品や交際、旅行等)に使うかと言うと、そう単純なものでもないでしょう。 これらの世帯は、もともと将来に予想される支出増に不安を持っている方々が多い世帯です。そこへ「給付金」と言う名の期間限定でしか使用できない商品券を渡しても、経済効果をもたらす消費行動に必ずしも結びつかないことは明らかでしょう。日用品の購入や貯蓄に充てられる部分が多くなるわけです。
それでは、例えば、上記以外の中所得や高所得世帯へ給付金を支給するとどうでしょうか?有効な経済効果が得られるのでしょうか?
確かに「地域振興券」の場合よりは、大きな経済効果を生むでしょう。しかし、日本人が長年に渡って育んできた国民性とも言うべき、質実剛健を美徳とする「倹約生活」や「貯蓄率の高さ」と共に、財源が不安定な年金制度、医療費や介護費の増大・少子化対策に上手に対処できていない不安いっぱいの「社会保障制度」、財政赤字の解消のために必ずや行われるであろう「消費税」等の増税や「社会保険料・介護保険料」の増額など、いくつもの大きな問題が将来の消費行動に大きく関わってきます。それは、将来の不安に備えるための「消費支出の抑制」と言う形で現れてきます。すなわち、これらの複合的な要因に明るい兆しが見えない限り、中・高所得者世帯への給付金でさえ、経済効果は思ったほど上がらないこととなります。
以上のような検証が十分になされ、それぞれの問題に対する解決策の目途が国民にも分かりやすいような形で明示されるならば、今回の「給付金」もその効果をある程度期待できるでしょうが、これらの問題に対する解決策が明示されないまま「給付金」が支給されても、不安が解消されるわけでもなく、「問題」が先送りされるだけです。これでは、国民の将来負担をさらに増大させ、不安をかえって増幅させることにつながります。
国民からの血税である「予算」は、中長期の視点に立ち、「生きること」に使って貰いたいものです。
see you next.
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税理士 溝江 諭 KSC会計事務所
Tel 011-812-1672 Mail info@ksc-kaikei.com
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札 幌 学 院 大 学 客 員 教授
北海道情報大学大学院 非常勤講師 溝江 諭
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札幌市豊平区の税理士 溝江 諭(みぞえさとし)です。
公明党が経済対策の一環として打ち出した「定額減税」。それがいつの間にか「定額給付金」へ変貌してしまいました。「定額減税」は、本来納税額がある人だけがその恩恵を受けますが、「定額給付金」は納税額がない低所得者の人にも給付されるものです。自民党内では、1999年の「地域振興券」のように予算のバラマキに終わる可能性が高いため、当初、導入には反対の意見が優勢だったようですが、衆院総選挙が現実的な視界に入ってくると、にわかに態度を急変、経済対策への取り込みが行われました。
経済対策に有効かどうかは、「景気を上昇させる効果があるのか」、または「これ以上の景気の低迷を抑えるのに有効であるのか」によります。
定額給付金をこれらの視点から検討すると、景気を上昇させる効果があるとは思えません。例えば、1999年の地域振興券では、支出額約6千2百億円、これに対して経済効果は2千臆円といわれ、景気を上昇させることはできませんでした。
では、景気の低迷を抑えるのに有効だったかと言うと、先のとおり、支出額のほとんど4千億円が日用品の購入や貯蓄に充てられ、その効果が僅かしか認められませんでした。
どうして地域振興券は景気対策に役立たなかったのでしょうか?
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・生活保護の被保護者、社会福祉施設への措置入所者。
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それでは、例えば、上記以外の中所得や高所得世帯へ給付金を支給するとどうでしょうか?有効な経済効果が得られるのでしょうか?
確かに「地域振興券」の場合よりは、大きな経済効果を生むでしょう。しかし、日本人が長年に渡って育んできた国民性とも言うべき、質実剛健を美徳とする「倹約生活」や「貯蓄率の高さ」と共に、財源が不安定な年金制度、医療費や介護費の増大・少子化対策に上手に対処できていない不安いっぱいの「社会保障制度」、財政赤字の解消のために必ずや行われるであろう「消費税」等の増税や「社会保険料・介護保険料」の増額など、いくつもの大きな問題が将来の消費行動に大きく関わってきます。それは、将来の不安に備えるための「消費支出の抑制」と言う形で現れてきます。すなわち、これらの複合的な要因に明るい兆しが見えない限り、中・高所得者世帯への給付金でさえ、経済効果は思ったほど上がらないこととなります。
以上のような検証が十分になされ、それぞれの問題に対する解決策の目途が国民にも分かりやすいような形で明示されるならば、今回の「給付金」もその効果をある程度期待できるでしょうが、これらの問題に対する解決策が明示されないまま「給付金」が支給されても、不安が解消されるわけでもなく、「問題」が先送りされるだけです。これでは、国民の将来負担をさらに増大させ、不安をかえって増幅させることにつながります。
国民からの血税である「予算」は、中長期の視点に立ち、「生きること」に使って貰いたいものです。
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札 幌 学 院 大 学 客 員 教授
北海道情報大学大学院 非常勤講師 溝江 諭
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