★ 中小会計要領の主な内容 その3 有価証券 ★
投稿日:2012年04月24日火曜日 15時49分51秒
投稿者:税理士 溝江 諭 KSC会計事務所 カテゴリー: General
札幌市豊平区の 税理士 溝江 諭(みぞえさとし) です。
中小会計要領の各論のうち主なものについて、法人税法との異同を意識しながら見て行きましょう。
前回は、≪中小会計要領の主な内容 その2 貸倒損失と貸倒引当金≫でした。
http://www.ksc-kaikei.com/news/index.cgi?no=156
今回は、「有価証券」です。
(1)有価証券は、原則として、取得原価で計上する。
(2)売買目的の有価証券を保有する場合は、時価で計上する。
(3)有価証券の評価方法は、総平均法、移動平均法等による。
(4)時価が取得原価よりも著しく下落したときは、回復の見込みがあると判断した場合を除き、評価損を計上する。
【解説】
有価証券は、(3)にあるように、総平均法、移動平均法等により、期末の金額(取得原価)を計算します。
(1)にあるように、期末の有価証券は、原則として、取得原価で計上します。ただし、(2)にあるとおり、短期間の価格変動により利益を得る目的で相当程度の反復的な購入と売却が行われる、法人税法の規定にある売買目的有価証券は、時価で計上します(上場株式であることが想定されます。)。
取得原価で評価した有価証券については、時価が取得原価よりも著しく下落したときは、回復の見込みがあるかないかを判断します。ここで、(4)にあるように、回復の見込みがあると判断した場合を除き、評価損を計上することが必要となります。
著しく下落したときとは、個々の銘柄の有価証券の時価が取得原価に比べて50%程度以上下落した場合には、該当するものと考えられます。有価証券の時価は、上場株式のように市場価格があるものについては容易に把握できますが、非上場株式については、一般的には把握することが難しいものと考えられます。時価の把握が難しい場合には、時価が取得原価よりも著しく下落しているかどうかの判断が困難になると考えられますが、例えば、大幅な債務超過等でほとんど価値がないと判断できるものについては、評価損の計上が必要と考えられます。
(以上、中小会計要領)
中小会計要領においては、有価証券の意義や範囲についての記載はないので、これらについては企業の実態等に応じて、企業会計基準、中小指針、法人税法で定める処理のうち会計上適当と認められる処理、その他一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行の中から選択して適用することになります。また、有価証券の区分についても記載がありませんが、(2)において、売買目的有価証券については時価で計上することとされていますので、少なくても売買目的有価証券とそれ以外の有価証券に区分する必要があります。
売買目的有価証券の意義については法人税法の定めに従うのが良いでしょう。つまり、売買目的有価証券とは、短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した有価証券(企業支配株式を除く。)であって、以下に掲げるものとされています(注1)。
① 専担者売買有価証券(トレーディング目的の専門部署を設置している場合に、その目的のために取得した有価証券)
② 短期売買有価証券(短期売買目的で取得したものである旨を帳簿書類に記載した有価証券)
③ 金銭の信託に属する有価証券(金銭の信託のうち信託財産として短期売買目的の有価証券を取得する旨を他の金銭の信託と区分して帳簿書類に記載したもの)
なお、売買目的有価証券以外の「それ以外の有価証券」には次のものが含まれることになります。
① 満期保有目的の債券(公社債など)
② 子会社株式及び関連会社株式
③ その他有価証券( 売買目的や満期保有目的以外の有価証券で子会社株式及び関連会社株式に該当しないもの。例えば長期保有の上場株式など)
期末評価額については、売買目的有価証券は時価とされていますが、それ以外の有価証券に関しては(4)で減損処理が必要とされる場合が定められています。
売買目的有価証券の期末評価額は法人税法と同じです。このため、時価評価額と期末帳簿価額の差額である評価益または評価損は益金または損金へ算入し、翌期に洗替処理により翌期の損金または益金へ算入することになります(注2)。
それ以外の有価証券の減損処理については法人税法でも損金経理を条件に損金算入が認められており(注3)、これに基づいて処理することも可能です。法人税法で、有価証券の評価損計上が認められている場合は次の通りです。
① 取引所売買有価証券、店頭売買有価証券・取扱有価証券およびその他価格公表有価証券(企業支配株式を除く)の価額が著しく低下したこと。
② ①以外の有価証券につき、その有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したため、その価額が著しく低下したこと。
③ ②に準ずる特別の事実
ここで、「価額が著しく低下したこと」とは、期末の価額が帳簿価額のおおむね50%相当額を下回ることとなり、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれないことをいいます。
また、「資産状態が著しく悪化したこと」とは、会社更生法等の規定に更生手続開始の決定があったことその他これに類する決定があったこと、または期末における有価証券の発行法人の1株当たりの純資産額が取得時のその価額に比しておおむね50%以上下回ることとなったことをいいます。
なお、中小会計要領では、減損処理を要しない「それ以外の有価証券」のうち満期保有目的の有価証券の期末評価額についての定めがありませんが、法人税法では償却原価法によるものとされているので注意が必要です(注4)。償却原価法とは、有価証券の期末調整前帳簿価額に、所定の経過日数割合等を乗じて算定したその事業年度に係る調整差益または調整差損を加算し、または減算した金額をもってその有価証券の帳簿価額とする方法で、その調整差益または調整差損は、益金算入または損金算入とされます。
最後に有価証券の評価方法ですが、法人税法や中小会計指針では総平均法、移動平均法によるものとされていますが(注5)、中小会計要領では、総平均法、移動平均法 等 とされています。これは、中小企業では、同一銘柄の有価証券を頻繁に売買することが少ないと考えられるため、個別法などの適用についても考慮したためと思われます。
次回は、棚卸資産 についてです。
≪中小会計要領の主な内容 その4 棚卸資産≫
http://www.ksc-kaikei.com/news/index.cgi?no=159
(注1)法61の3Ⅰ、法令119の2Ⅱ、119の12
(注2)法61の3Ⅱ、法令119の15Ⅰ
(注3)法33Ⅱ、法令68Ⅰ②、法基通9-1-7,9-1-9
(注4) 法61の3Ⅰ②、法令119の14、139の2、139の2Ⅰ
(注5)法令119の2Ⅰ
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中小会計要領の各論のうち主なものについて、法人税法との異同を意識しながら見て行きましょう。
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今回は、「有価証券」です。
(1)有価証券は、原則として、取得原価で計上する。
(2)売買目的の有価証券を保有する場合は、時価で計上する。
(3)有価証券の評価方法は、総平均法、移動平均法等による。
(4)時価が取得原価よりも著しく下落したときは、回復の見込みがあると判断した場合を除き、評価損を計上する。
【解説】
有価証券は、(3)にあるように、総平均法、移動平均法等により、期末の金額(取得原価)を計算します。
(1)にあるように、期末の有価証券は、原則として、取得原価で計上します。ただし、(2)にあるとおり、短期間の価格変動により利益を得る目的で相当程度の反復的な購入と売却が行われる、法人税法の規定にある売買目的有価証券は、時価で計上します(上場株式であることが想定されます。)。
取得原価で評価した有価証券については、時価が取得原価よりも著しく下落したときは、回復の見込みがあるかないかを判断します。ここで、(4)にあるように、回復の見込みがあると判断した場合を除き、評価損を計上することが必要となります。
著しく下落したときとは、個々の銘柄の有価証券の時価が取得原価に比べて50%程度以上下落した場合には、該当するものと考えられます。有価証券の時価は、上場株式のように市場価格があるものについては容易に把握できますが、非上場株式については、一般的には把握することが難しいものと考えられます。時価の把握が難しい場合には、時価が取得原価よりも著しく下落しているかどうかの判断が困難になると考えられますが、例えば、大幅な債務超過等でほとんど価値がないと判断できるものについては、評価損の計上が必要と考えられます。
(以上、中小会計要領)
中小会計要領においては、有価証券の意義や範囲についての記載はないので、これらについては企業の実態等に応じて、企業会計基準、中小指針、法人税法で定める処理のうち会計上適当と認められる処理、その他一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行の中から選択して適用することになります。また、有価証券の区分についても記載がありませんが、(2)において、売買目的有価証券については時価で計上することとされていますので、少なくても売買目的有価証券とそれ以外の有価証券に区分する必要があります。
売買目的有価証券の意義については法人税法の定めに従うのが良いでしょう。つまり、売買目的有価証券とは、短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した有価証券(企業支配株式を除く。)であって、以下に掲げるものとされています(注1)。
① 専担者売買有価証券(トレーディング目的の専門部署を設置している場合に、その目的のために取得した有価証券)
② 短期売買有価証券(短期売買目的で取得したものである旨を帳簿書類に記載した有価証券)
③ 金銭の信託に属する有価証券(金銭の信託のうち信託財産として短期売買目的の有価証券を取得する旨を他の金銭の信託と区分して帳簿書類に記載したもの)
なお、売買目的有価証券以外の「それ以外の有価証券」には次のものが含まれることになります。
① 満期保有目的の債券(公社債など)
② 子会社株式及び関連会社株式
③ その他有価証券( 売買目的や満期保有目的以外の有価証券で子会社株式及び関連会社株式に該当しないもの。例えば長期保有の上場株式など)
期末評価額については、売買目的有価証券は時価とされていますが、それ以外の有価証券に関しては(4)で減損処理が必要とされる場合が定められています。
売買目的有価証券の期末評価額は法人税法と同じです。このため、時価評価額と期末帳簿価額の差額である評価益または評価損は益金または損金へ算入し、翌期に洗替処理により翌期の損金または益金へ算入することになります(注2)。
それ以外の有価証券の減損処理については法人税法でも損金経理を条件に損金算入が認められており(注3)、これに基づいて処理することも可能です。法人税法で、有価証券の評価損計上が認められている場合は次の通りです。
① 取引所売買有価証券、店頭売買有価証券・取扱有価証券およびその他価格公表有価証券(企業支配株式を除く)の価額が著しく低下したこと。
② ①以外の有価証券につき、その有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したため、その価額が著しく低下したこと。
③ ②に準ずる特別の事実
ここで、「価額が著しく低下したこと」とは、期末の価額が帳簿価額のおおむね50%相当額を下回ることとなり、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれないことをいいます。
また、「資産状態が著しく悪化したこと」とは、会社更生法等の規定に更生手続開始の決定があったことその他これに類する決定があったこと、または期末における有価証券の発行法人の1株当たりの純資産額が取得時のその価額に比しておおむね50%以上下回ることとなったことをいいます。
なお、中小会計要領では、減損処理を要しない「それ以外の有価証券」のうち満期保有目的の有価証券の期末評価額についての定めがありませんが、法人税法では償却原価法によるものとされているので注意が必要です(注4)。償却原価法とは、有価証券の期末調整前帳簿価額に、所定の経過日数割合等を乗じて算定したその事業年度に係る調整差益または調整差損を加算し、または減算した金額をもってその有価証券の帳簿価額とする方法で、その調整差益または調整差損は、益金算入または損金算入とされます。
最後に有価証券の評価方法ですが、法人税法や中小会計指針では総平均法、移動平均法によるものとされていますが(注5)、中小会計要領では、総平均法、移動平均法 等 とされています。これは、中小企業では、同一銘柄の有価証券を頻繁に売買することが少ないと考えられるため、個別法などの適用についても考慮したためと思われます。
次回は、棚卸資産 についてです。
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(注2)法61の3Ⅱ、法令119の15Ⅰ
(注3)法33Ⅱ、法令68Ⅰ②、法基通9-1-7,9-1-9
(注4) 法61の3Ⅰ②、法令119の14、139の2、139の2Ⅰ
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◎ 法人税の税務調査って、当たる確率はどの程度なのかな?
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