現行相続税法では、相続財産を「法定相続分」で分割したものとして相続税の総額を計算することになっているます。これを法定相続分課税方式といいます。法定相続分課税方式の特徴は、遺産分割のやり方に関わらず、遺産と法定相続人の数が同じである限り、相続税の総額が一定になるという点にありますが、一方で、同じ価額の財産を相続しても、遺産と法定相続人の数が変わってくると、相続税の額も変わってきてしまうという不公平も指摘されています。

 この不公平感を解消するのが、平成21年度税制改正で導入され今年10月から遡って適用される予定の遺産取得課税方式です。遺産取得課税方式では、相続した額が同じであれば、遺産額がどれだけあろうと、相続人が何人いようと、相続税額も同じ額となります。

 ただし、相続人によっては、遺産取得課税方式の導入により、かえって相続税額が増える者が出てくる可能性があります。もともと遺産取得課税方式は中小企業の後継者の相続税を軽減する「事業承継税制」の一環で導入されるものであることから、特に事業承継と無関係の相続人においては、税負担の増加するケースが多数出る可能性があるので要注意です。
 
 平成20年度税制改正の要綱によると、「遺産取得課税方式に改める際、格差の固定化の防止、老後扶養の社会化への対処等相続税を巡る今日的課題を踏まえ、総合的見直しを検討する。」とあり、基礎控除の水準、最高税率を含む税率構造のあり方についても、格差の固定化の防止の観点から検討するとされていますので、注意が必要です。