おはようございます。本日は海外がらみの取引に関する税法上の取扱い等について簡単にみていきましょう。
 
海外がらみの節税に関して武富士事件が有名です。ケイマン諸島事件やリヒテンシュタイン事件なども有名です。
武富士事件について言えば、今年度巨額の税金の還付と還付加算税が支払われたのは記憶に新しいと思います。当該事件は贈与税逃れでタックスプランニングされたものです。課税逃れは明白でしたが、当時の税法では対応できなかったので、税法改正が行われました。
これから同種の海外がらみのタックスプランニングについては国税当局等の監視の目が厳しくなる一方でしょう。財政もひっ迫し、とるべき、とれるところからとるというスタンスで日本や海外の税務当局もいるようですから。
 
さて、日本。継続的な円高や震災がらみのリスクヘッヂ等、経営上の諸課題をクリアするため、海外への移転が続いている。国境なき取引活動による海外取引の比重も高まる一方です。
このような状況下で、海外がらみの租税回避行為について、取引や資産の流れを把握して、課税強化を図っていくでしょう。税務当局も海外がらみの取引や資産移転については関心を高めているのは、課税の公平性を高め、納税者の納税意識を害さないようにするためでもあります。

このような中で国税局の国際化対応プロジェクトチ-ムによる海外取引・海外金融資産の把握による実態解明強化が図られつつあります。
それとともに、国際条約等で、国際的な情報交換強化 国際徴収共助 といった海外との租税補足・徴収に関する協力による脱税補足の強化が図られることが決定。日本でも高額海外資産について、調書の提出、国外財産調書制度が創設されました。

実務に携わる税理士としてよく接するのは、下記のような宣伝である。
① タックスヘブンの国、地域である海外に本店を形式的に移しませんか
② 富裕層をターゲットにして海外口座を設けて、資産の移転は補足されませんよ。

このような宣伝をみつけて相談にくる方もいないわけではない。その時私は決まってこういいます。
① 取引等が否定されて修正申告となった場合にも本業を圧迫しない範囲
② 資産移転は全額すててもいい金額の範囲
このような範囲でリスクをとるのなら、ご自分の判断でどうぞと。この話には裏がある。海外コンサルタントの友人の話「富裕層をタ-ゲツトにした業者の9割はひどい業者です」と。さらに「ほとんどの方は財産全部なくしています」そして「一億位の余裕資産がなければ絶対やめた方がいい」と。

上述のような話を後輩から聞いている私は、海千山千の海外がらみの、資産移転や節税行為を安請け合いする業者を信頼してはいけないのだと思っている。もっと言うと、課税当局に補足されない海外資産の移転ということを裏返すと、いざという時にその資産の保全はされていないという絵に描いた餅になりかねないのです。
そこで基本的にはお止めなさいということにしています。日本で税金を払いつつ、基本的にリスクが少ない合理的節税をすることにより、経営の安定化や資産の保全増殖を図ることは可能ですよと、声を大にしていいたい。その代わりほどほどが一番ですよと。

 国際的な租税回避行為は、違法ではないかもしれないけれど、不当だという位置づけの中、私たち税理士がどのような立ち位置で取り組むのかは重要な意味を持つと思います。納税者が納税義務を果たすうえで、独立公正な立場にいるという、税理士法一条の立場から、法律の専門家、そして、国家から税法に関する業務独占権を付与されていることなどを鑑みると、私はコンサルタントとしての立場だけでコンサルをするような税理士が多くなると、税理士制度自体に影響がでるのではと、危惧しています。