中小企業も内部統制が重要であることは常々言ってま
すので気にしていただいてると思います。

ところが、なかなか中身に触れているものが少なく、
中小企業の経営者に取りましては人材不足もあって対
応しにくいだろうと思われます。

そこで、業務別に実践ルールに基づいたわかりやすく
解説してみたいと思います。


まずは、販売業務から見て行きましょう。


販売活動とは、顧客に商品やサービスを提供し、その
対価を売上として計上し、代金を回収する一連の業務
プロセスをさしています。

売上は会社の収益の源泉であり、販売活動が企業の
基幹業務、会社自体が継続していくための根本に位置
づけられる業務だけに、この業務プロセスにしっかりし
た内部統制を整備することが不可欠だということはお
分かりでしょう。

この業務プロセスで発生すると考えられる不正として
は、「売上の過大計上」もしくは、「売上の過小計上」
という二つのパターンが考えられます。

最近よく見受けられるのが、大企業でも行われている
「売上の過大計上」といいますか、「売上の架空計上」
です。

中小企業においてもこの過大計上は、営業担当者が営
業ノルマを達成するために架空売上を計上するケース
が考えられます。


また「売上の過小計上」については、よくあることと
しては、商品や在庫を営業担当者や在庫管理担当者
が外部に横流しして、その対価を着服するケースが考
えられます。


そこで、これらの二つの過ちを起こさせないためには、
販売活動に関する一連の流れからリスクを洗い出し、
それらのリスクをコントロールするためのルールを作
ることが重要なのです。


そこで、最初は販売活動に関する一連の業務の流れを
見ていくことにしましょう。

販売活動を行うためには取引先の与信管理を行わなけ
れば進みません。

与信管理という業務があるのです。

1.与信管理とは、得意先の支払い能力に応じて与信
 限度額を定め、その範囲内で取引を行うということ
 です。
 それは貸倒れなどの事故を未然に防止することを目
 的としているのです。非常に重要な業務で、中小企
 業にとっては貸倒が発生すれば、即倒産に追い込ま
 れることになりますから、このルールつくりは重要
 です。


2.次の業務は受注業務です。
 電話、ファクシミリ、インターネットなどを通じて
 顧客から注文を受けるという業務です。


3.その受注を受けて商品の出荷、サービスの提供とい
 う業務があります。

 つまり、顧客に対する製品・商品の納品、またはサ
 ービスの提供を行う業務です。


4.そして納品やサービスの提供により、売上の請求を
 行う業務です。

 製品・商品やサービスの提供に伴って売上を発生主
 義で計上するために、顧客に対して請求を行わなけ
 ればなりません。

 債権・債務が確定する重要な業務です。


5.その請求に応じて入金、回収業務が発生します。
 営業担当は請求金額の回収を行い、入金による債権
 の消滅を記録しなければなりません。


6.その回収までの間は、債権管理をしっかりと行わな
 ければなりません。

 入金予定日等により債権残高を管理し、必要に応じ
 て再請求・売上修正などの処理を行う業務です。

このように、

与信管理ー受注ー出荷ー請求ー回収ー債権管理とい
う一連の業務の流れが考えられます。

内部統制とは、これら各業務活動で財務報告の虚偽記
載につながるリスクを洗い出し、それらのリスクをコ
ントロールするための対策をルール化することにあり
ます。

たとえば、与信管理では「顧客の支払い能力を超えた
製品やサービスを出荷し、代金の回収が不能となる」
とか、
「不適切な顧客との取引により違法行為にかかわって
しまう」などのリスクが考えられます。

そこで、これらのリスクをコントロールするために次
のような対策が考えられ、これらの対策を実施するた
めのルールを整備します。

1.まず、新規顧客との取引を開始する前に、相手先の
 信用調査を行う。

2.しかも、得意先の信用調査は、販売・会計担当部署
 から独立させる。

3.そして、信用調査に客観性を持たせるため、専門の
 信用情報や調査会社を利用する。

4.その上で、得意先の支払い能力に応じて与信限度額
 を設定し、超過の有無をチェックする。

しかも、このような対策と運用ルールを講じていく上
で大前提となるのは職務分掌であり、最低限次のよう
な取り決めが必要と考えられるでしょう。

販売に関連する業務(受注、出荷、請求書発行、代金
回収など)をそれぞれ独立した部署が担当するか担当
者を一人だけにさせない。

各担当部署について、適宜人事ローテーションを行う
など、癒着などの巣窟と化させない。

このように具体的に販売業務から購買・在庫管理業
務、経理・財務業務、人事・給与計算業務へと自社の
業務プロセスでのリスクを洗い出し、それらリスクをコン
トロールするためのルール作りを行えば、中小企業に
とっても難しくないのです。

内部統制は業務のあるべき姿を構築することであって、
できることから始めていけばいいのです。

大仰なITシステムありきではないことを学ぶべきです。


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