日経ニュ?スによりますと、上場企業が特別目的会社(SPC)を使って、連結対象から外している資産の規模は10兆円を超えているそうです。利用している企業では、上位に大手銀行、大手不動産が並んでいます。

 今回はSPC自体の会計税務上の特徴を概説したいと思います。

 特定目的会社(SPC:Special Purpose Company)とは、資産流動化を目的とし、資産を受け入れると共に、その資産価値及び将来の収益価値を担保に資金調達を行い、投資家に対し対象資産の運用・処分から生じるキャッシュフローを分配する法人のことをいいます。

 特定の資産から生じるキャッシュフローと複数の投資家とを結ぶ導管の役割を果たすことだけを目的とするため、流動化業務を行うためには内閣総理大臣に対し一定の届出書と資産流動化計画等を提出しなければならず、資産流動化計画及びその付帯業務のほか、他の業務を営むことができないなどの種々の規制があります。

 会社の計算は、資産流動化法に基づき、特定目的会社の計算に関する規則従って行う必要があります。計算規則では、貸借対照表・損益計算書・社員資本等変動計算書・注記表の計算書類、事業報告書、附属明細書の作成が義務付けられています。

 また、税務上の取扱いについては、この導管としての役割が反映され、特定社債の発行価額の総額が1億円以上であること、同族会社に該当しないこと、資産流動化法に違反していないこと等の要件を満たす場合に、他の法人と異なる下記のような特別規定を設けています。

1.支払配当等の損金算入
  これは、その事業年度に係る利益の配当の支払額が配当可能所得の90%を超えていることが条件です。ここで、配当可能所得とは、原則として支払配当の 損金算入前の所得の金額で、繰越欠損金を控除した後の金額です。
  このように、損金算入の要件として税務上の所得金額を挙げていることから、会計上の利益と税務上の所得金額が異なる場合には注意が必要です。特に 税務否認の関係で所得金額が利益より大きい場合、所得金額の90%が利益を超えている場合があり得るからです。

2.受取配当等の益金算入
3.中小法人に対する軽減税率、貸倒引当金の法定繰入率、交際費等の一定額
 の損金算入などの規定の不適用
4.連結納税の不適用
5.事業税の外形標準課税の不適用

 上記のうち最も重要なのが支払配当等の損金算入でしょう。この規定により、投資家への分配を行えば、SPC自体の所得金額をゼロとすることが可能となります。実質的には、投資家への課税のみとすることができるため、まさに導管としての役割を反映したものと言えます。

 但し、SPC自体に損失が生じた場合、当該損失を投資家に帰属させることができません。この点、利益のみならず損失も投資家(組合員)に移転させることができる組合形態とは異なる点です。法人としての性格からくるものでしょう。
以    上
税理士 齋藤 忠志(http://www.saito777.com)