23.05.30


固定資産税評価額が付されていない家屋の評価


「父は、居住用の家屋を新築し居住直後に死亡しました。新築直後であるために今年の固定資産税評価額が付されておりません。このような場合、家屋はどのように評価したらよいのでしょうか。」


1.家屋の評価の基本


相続税の課税価格を計算する際に、自宅やアパートなどの家屋は、


① 原則としてその家屋の固定資産税評価額に評価倍率1.0倍を乗じて計算した金額により評価することとされています。つまり、固定資産税評価額がそのまま家屋の評価額となります。


② さらに、アパートなどの貸家は、その家屋の評価額から、貸家の評価の定めによって、借家権割合30%に賃貸割合を控除して評価額とします。


2.国税庁が公表する財産評価基準書に記載のある評価方法


増改築等の場合の評価額の算定方法として、下記の順序で評価する旨が明示されています。


したがって、新築の場合もこの方法を用いることには、合理的であると認められると考えます。


① 相続税の申告期限までに固定資産税評価額が付いた場合には、その固定資産税評価額、


② その家屋の付近にある状況の類似した家屋の固定資産税評価額を基として、その付近家屋との構造、経過年数、用途等の差を考慮して評定した価額、


③ 状況の類似した付近家屋がない場合には、その家屋の再建築価額から経過年数に応ずる償却費相当額(定率法)を控除した価額の70%に相当する金額、となっています。


3.固定資産税の評価額が付される時期がわからない


固定資産税評価額は、実際の購入代金や建築工事費ではなく、所定の固定資産評価基準による再建築価格等をもとに評価された金額です。新築の家屋については随時、市区町村(東京23区は都税事務所)がこれを決めていきますが、いつ決定されて台帳に登録されるのか、その実態はわかりません。


固定資産税評価額は、固定資産税だけでなく、不動産取得税の計算の価額にもなります。相続税の申告期限まで10ヶ月ですから、その間に固定資産税評価額が付いてもよさそうなものですが、固定資産税係りが価額を付けるのを待つことになります。


また、付近に都合良く同じような建物があることは、ほとんど考えられませんので、現実的には、の方法によって相続税の申告準備を行うことになると考えます。


4.建築工事費の70%により評価する場合の問題点


この場合、新築家屋の固定資産税評価額より高くなるケースが一般的で、高い相続税額となってしまいます。


で申告をして相続税の申告期限後に固定資産税評価額が明らかになったら、更生の請求(申告のやり直し)はできないものかと考えますが、原則論からいえば、は国税庁が公表している評価方法であり、本人が選択したものでその評価額計算に誤りがあるわけではないので、更正の請求の理由には、なじまないであろうと考えます。


5増改築物件で新しい固定資産税評価額が付されていない場合の評価に注意


固定資産税の評価替えは3年に1度、基準年度の1月1日現在の現況をもとに評価が行います。


家屋を増改築すると、その分家屋の資産価値が上がるので、増改築が行われた場合には、評価替えの基準年度ではなくても再評価が行われることになっていますが、再評価が相続税の申告期限までに間に合わないこともあるようです。


評価替えが行われた後に増改築が行われ、再評価額がまだ付されていないという場合に、増改築分が加味されていない固定資産税評価額で家屋を 評価して相続税の申告をすれば、調査で否認されるということになってしまいます。


評価替えが行われた後に増改築が行われ、再評価額がまだ付されていない場合には、上記2の国税庁が公表する「財産評価基準書」に記載がある評価方法によって評価することになります。


6.相続開始直前に取得した資産の評価に注意


①原則は、財産評価基本通達に定める方式


平成8年1月1日以降に開始した相続により取得した資産(土地等・建物等)については、旧措置法第69条の4の規定(いわゆる取得価額課税)が廃止されたことにより当該資産の取得の時期にかかわらず、その評価は原則として相続税法第22条に定める時価によるものとされます。


そして、具体的な財産評価に計算に際しては、特別の定めのある場合を除き、財産評価基本通達に定める方式(土地等については路線価方式又は倍率方式、建物等については倍率方式)により計算することが原則とされています。


②財産評価基本通達6(この通達の定めにより難い場合の評価


「上記の財産評価基本通達に基づく評価(原則的取扱い)によって評価することが著しく不適当と認められる場合(特別の事情がある場合)には、国税庁長官の指示を受けて評価する。」と規定されています。


特別の事情の例としては、


相続開始直前に取得した不動産(土地等・建物等)について、


被相続人の名義で取得されているが、実際の取得等は相続人等が関与して取得した場合


相続開始直後に直ちに売却して単に相続開始の一時点において形式的に被相続人の所有形態を不動産に置き換えて、当該不動産の時価(通常の取引価額)と相続税評価額との差額(評価差額)のみを不当に享受することを目的としていると認められるような場合、


には、財産評価基本通達6の規定を適用した特例的取扱いの適用を受けて、他の合理的な評価方式による時価の算定がなされるものと考えられます。(特例的取扱い)


 


参考


国税庁HP→ホ-ム→税について調べる→法令解釈通達→財産評価


(家屋の評価)


89  家屋の価額は、その家屋の固定資産税評価額(地方税法第381((固定資産課税台帳の登録事項))の規定により家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に登録された基準年度の価格又は比準価格をいう。以下この章において同じ。)に別表1に定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する。(昭41直資319・平3課評24外・平16課評27外改正)


(建築中の家屋の評価)


91  課税時期において現に建築中の家屋の価額は、その家屋の費用現価の100分の70に相当する金額によって評価する。(昭41直資319改正)


(附属設備等の評価)


92  附属設備等の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。(平16課評27外・平20課評2-5外改正)


1) 家屋と構造上一体となっている設備


家屋の所有者が有する電気設備(ネオンサイン、投光器、スポットライト、電話機、電話交換機及びタイムレコーダー等を除く。)、ガス設備、衛生設備、給排水設備、温湿度調整設備、消火設備、避雷針設備、昇降設備、じんかい処理設備等で、その家屋に取り付けられ、その家屋と構造上一体となっているものについては、その家屋の価額に含めて評価する。


2) 門、塀等の設備


門、塀、外井戸、屋外じんかい処理設備等の附属設備の価額は、その附属設備の再建築価額から、建築の時から課税時期までの期間(その期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年とする。)の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額の100分の70に相当する金額によって評価する。この場合における償却方法は、定率法(所得税法施行令第120条の21項第2号ロ又は法人税法施行令第48条の21項第2号ロに規定する定率法をいう。以下同じ。)によるものとし、その耐用年数は減価償却資産の耐用年数等に関する省令(以下「耐用年数省令」という。)に規定する耐用年数による。


3) 庭園設備


庭園設備(庭木、庭石、あずまや、庭池等をいう。)の価額は、その庭園設備の調達価額(課税時期においてその財産をその財産の現況により取得する場合の価 額をいう。以下同じ。)の100分の70に相当する価額によって評価する