10 遺言書作成の準備

 1.1 遺言とは

遺言(「いごん」または「ゆいごん」)とは、遺言を作る人(遺言者)が、遺言者の死後の法律関係(財産、身分など)が、遺言で定められた通りに実現することを法的に保障する制度で、法律に定める一定の方式に従ってする、意志の表示のことです。

 

わかりやすく言うと、自分が死んだ時に、「財産を誰々に残す」とか、「実は隠し子がいるので認知する」とかいったことを、死ぬ前に書いて残しておくことです。気をつけなければいけないのは、遺言の方式は法律で定められているので、法律に違反する遺言は無効になってしまうということです。

遺言は死ぬ前であれば、いつでも本人の意志で自由に変更も撤回をすることができます。ただし、変更も撤回も、法律上の方式を守らなければいけません。

遺言が出来る内容は法律で決まっているので、それ以外の事項についての遺言は何の効力もありません。

 

 12 遺言でできること

遺言は原則として法定相続よりも優先されますが、遺言書のすべてが法的な強制力を持つものではありません。

遺言を残せる事項は民法で定める一定の項目に限られます。

 

1.2.1 財産の処分に関すること

 ① 遺贈(遺言により財産を贈与すること)

② 寄付

一定の法定相続人がいる場合は、相続人の遺留分を侵害できないこととなっていますが、相続人以外の人や法人に財産を遺贈したり、寄付するといった遺言が可能です。

③ 財産の保全、または収益の有効活用のための信託設定

④ 法定相続分と異なる割合の指定ができます。

(例:財産はこのように分けてください。分け方は、○○さんに任せます。)

各相続人の法定相続分は、民法によって定められていますが、法定相続分と違う相続割合の指定が可能です。

また、この相続分の指定を第三者に委託することも可能です。

※遺留分の規定に抵触することはできません。

⑤ 相続人ごとに相続させる財産の指定ができます。

(例:自宅は長男の○男に、現金は長女の△子へ相続させる。)

⑥ 遺産分割の禁止(5年)

遺言によって、5年以内に限り、遺産の分割を禁止することができます。

⑦ 生前贈与、遺贈の持戻しの免除をすることができます。

⑧ 遺留分の減殺方法の指定

(例:遺留分減殺請求は○○のように行いなさい。)

贈与や遺贈によって遺留分を侵害する場合に、遺留分権利者が、この減殺請求する場合があります。この減殺をどのように行うかを被相続人が予決めておくことができます。

⑨ 共同相続人間の担保責任の減免・加重

(例:○子には、この遺産に関する担保についての責任を負わせないようにする。)

各共同相続人は、他の共同相続人に対し、互いに公平な分配を行うために、その相続分に応じて、それ相応の責任(被相続人の債務や担保の負担)を負います。この法定の担保責任の範囲を遺言によって変更することが可能です。

⑩ 遺言執行者の指定

(例:遺産の分割手続は、○○さんにお願いする。)


  1.2.2
 身分に関すること

① 認知

(例:○男は私の子供です。)

婚姻外で生まれた子との間に、遺言による認知をすることが可能です。

② 法定相続人の廃除、またはその取り消し

(例:○男には財産をあげたくないので、相続人から廃除したい。)

③ 未成年後見人、または後見監督人の指定

(例:残された未成年の子の後見人となってほしい。)

子が未成年者の場合、被相続人が信頼している人を遺言によって後見人に指定することができます。ただし、指定できるのは最後に親権を行う人のみです。