平成25年度税制改正の概要
投稿日:2013年04月03日水曜日 18時10分31秒
投稿者:走る税理士 志村 賢一 カテゴリー: 税法改正
平成25年度税制改正の概要
Ⅰ 個人所得課税
1 所得税の最高税率の見直し
現行の所得税の税率構造に加えて、課税所得4,000 万円超について45%の税率を創設しました。
改正は、平成27年より適用されます。
2 金融・証券税制
① 特定公社債の利子に対する課税の見直し
特定公社債の利子について20%源泉分離課税の対象から除外し、居住者等が支払を受けるべき特定公社債等の利子等は、20%(所得税15%、住民税5%)の税率による申告分離課税へ変更
平成28年1月1日以後に支払を受けるべき利子等に適用されます。
② 特定公社債の譲渡所得等の課税方式見直し
特定公社債等(国債、地方債、外国国債、公募公社債、上場公社債など)の譲渡所得等については、20%(所得税15%、住民税5%)の税率による申告分離課税
特定公社債等の償還又は一部解約等により支払を受ける金額については、特定公社債等の譲渡所得等に係る収入金額とし、20%の税率による申告分離課税の対象に
損失が生した場合には他の特定公社債等の譲渡所得等から控除することを可能に
上場株式等の譲渡損失及び配当所得の損益通算並びに繰越控除の特例の範囲に特定 公社債等の利子所得等及び譲渡所得等を加え、これらの所得間や上場株式等の配当所得及び譲渡所得等との損益通算を可能に
特定公社債等の譲渡により生じた損失の金額で、その年に損益通算をしても控除しきれない 金額は、翌年以後3年間、特定公社債等の利子所得等及び譲渡所得等や上場株式等の配当所得、譲渡所得等からの繰越控除が可能になります。
平成28年1月1日以後の譲渡に適用
③ 上場株式の配当所得
10%軽減税率(所得税7%住民税3%)は平成25年12月31日をもって廃止
④ 法人に係る利子割の廃止
イ 法人については利子についての利子割の課税は廃止となり
ロ 道府県民税法人税割額から利子割額を控除ないし不足額を充当及び還付する制度等は廃止となります。
平成28年1月1日以後に支払いを受ける利子等から適用
3 住宅税制
3 住宅税制
(1) 住宅ローン減税を平成26年1月1日~29年12月31日まで4年間延長し、消費税率の増税のタイミングに合わせ、平成26年4月~29年12月までの期間は住宅ローンの減税枠が拡大されます。
イ 一般の住宅の場合
居住年 借入限度額 控除率 各年の控除限度額 最大控除額
H26.1~26.3 2,000万円 1.0% 20万円 200万円
H26.4~29.12 4,000万円 1.0% 40万円 400万円
ロ 認定住宅の場合
居住年 借入限度額 控除率 各年の控除限度額 最大控除額
H26.1~26.3 3,000万円 1.0% 30万円 300万円
H26.4~29.12 5,000万円 1.0% 50万円 500万円
*認定住宅とは、認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅のことです。
(2) 自己資金で認定住宅を取得した場合及び省エネ等の一定の住宅リフォームを行った場合の所得税の住宅投資減税について拡充
(3) 個人住民税における住宅ローン控除について、平成26 年4 月1 日から平成29年末までの間、控除限度額を拡充
その年の住宅ローン控除額がその年分の所得税額から控除しきれなかった残額については、翌年度分の個人住民税から次の範囲内で減額
居住年 控除限度額
H26.1~26.3 所得税の課税総所得金額等 ×5%(最高 9.75 万円)
H26.4~29.12 所得税の課税総所得金額等 ×7%(最高 13.65 万円)
(4) 復興支援のための税制上の措置
① 高台移転を更に推進するため、一定の要件を満たす防災集団移転促進事業で行われる土地の買取りに係る譲渡所得に対し、5,000 万円の特別控除の創設
② 東日本大震災の被災者が新たに再建住宅を取得等する場合、住宅ローン減税の最大控除額を他の地域よりさらに抜本的にかさ上げし、600 万円に引上げ(現行360 万円)
Ⅱ 相続税・贈与税
1 相続税
1 相続税
(1) 基礎控除、税率構造の見直し
相続税がかからない額(基礎控除額)が大幅に引き下がります。つまり、今までは相続税がかからなかったのに今後はかかる、ケースが多くなると考えられます。
① 基礎控除
現行 「5,000 万円+1,000 万円×法定相続人数」
改正 「3,000 万円+600 万円×法定相続人数」
② 相続税の最高税率を55%に引き上げる等、税率構造の見直し
② 相続税の最高税率を55%に引き上げる等、税率構造の見直し
(現行) 改正後
課税価格 税率
1,000万円以下の部分 10% 10%
3,000万円以下の部分 15% 15%
5,000万円以下の部分 20% 15%
1億円以下の部分 30% 30%
2億円以下の部分 40%
3億円以下の部分 40% 45%
3億円超の部分 50%
6億円以下の部分 50%
6億円超の部分 55%
(2) 小規模宅地等の評価減の拡充
小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例について、居住用宅地の適用対象面積の上限を330 ㎡(現行240 ㎡)に拡大するとともに、居住用宅地と事業用宅地(貸付事業除く)の完全併用を可能とする等の拡充
平成27年1月1日以後の相続について適用
(3) 未成年者控除の引き上げ
20歳まで1年につき10万円(現行6万円)
(4) 障害者控除の引き上げ
① 一般障害者の場合、85歳まで1年につき10万円(現行6万円)
② 特別障害者の場合、85歳まで1年につき20万円(現行12万円)
平成27年1月1日以後の相続について適用
2 贈与税
(1) 贈与税の税率構造の見直し
相続時精算課税の対象とならない贈与税の税率について最高税率を相続税の最高税率に合わせる一方で、子や孫等が受贈者となる場合の贈与税の税率構造を緩和する見直しが行われました。
①20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた財産に係る税率構造
(現行) 改正
課税価格 税率
200万円以下の部分 10% 同左
300万円以下の部分 15%
400万円以下の部分 20% 15%
600万円以下の部分 30% 20%
1,000万円以下の部分 40% 30%
1,000万円超の部分 50%
1,500万円以下の部分 40%
3,000万円以下の部分 45%
4,500万円以下の部分 50%
4,500万円超の部分 55%
② ①以外の贈与の場合の税率
(現行) 改正
課税価格 税率
200万円以下の部分 10% 同左
300万円以下の部分 15% 15%
400万円以下の部分 20% 20%
600万円以下の部分 30% 30%
1,000万円以下の部分 40% 40%
1,000万円超の部分 50% 45%
1,500万円以下の部分 45%
3,000万円以下の部分 50%
3,000万円超の部分 55%
平成27年1月1日以後の贈与について適用
(2) 相続時精算課税制度
適用要件の緩和
① 受贈者の範囲に、20歳以上である孫(現行 推定相続人のみ)を追加し
② 贈与者の年齢要件を65 歳以上から60 歳以上に引下げる
平成27年1月1日以降の贈与からの適用になります。
(3) 教育資金の一括贈与税についての非課税
30歳未満の者の教育資金に充てるための直系尊属が金融機関に金銭の信託した場合、1,500万円(学校等以外に支払われるものについては500万円)までの金額は贈与税非課税とする制度です。
平成25年4月1日から27年12月31日までに拠出されたものに限り適用
ただし、
① 金銭を金融機関等に信託等する必要がある
② 実際に教育資金の支払いに充当した事を証する書類(領収書)を提出しなくてはいけない
③ 使いきれなかった場合には、贈与税が課税されます
3 事業承継税制
(1) 非上場株式等に係る相続税等の納税猶予制度について、適用要件が緩和されます。
平成27年1月1日以降発生する相続からの改正になります。
Ⅲ 法人課税
1 民間投資の喚起と雇用・所得の拡大
(1) 国内の生産等設備投資額を一定以上増加させた場合にその生産等設備を構成する機械装置の取得価額の 30%の特別償却又は3%の税額控除ができる制度を創設
(1) 国内の生産等設備投資額を一定以上増加させた場合にその生産等設備を構成する機械装置の取得価額の 30%の特別償却又は3%の税額控除ができる制度を創設
(2)試験研究を行った場合の法人税の特別控除制度の見直し
① 研究開発税制の総額型の控除上限額を法人税額の20%から30%に引き上げる
② 別試験研究費の範囲に一定の共同研究等を追加する
(3) 環境関連投資促進税制について、その適用期限を2年延長するとともに、即時償却の対象資産にコージェネレーション設備を追加
(4) 企業による雇用・労働分配(給与等支給)を拡大するための税制措置の創設
青色申告書法人が国内雇用者(役員とその親族分は除く)に対する雇用者給与等の増加割合が5%以上であるときで、以下の条件を満たすとき
① 雇用者給与等支給額が前事業年度の雇用者給与等支給額を下回らないこと
② 平均給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額を下回らないこと
増加した給与額の10%分(当期の法人税額の10%(中小企業者等については、20%)を上限(所得税も同様)を税額控除できる制度です。
(注) 下記の雇用促進税制等とは選択適用となります。
平成25年度4月1日~28年3月31日までの間に開始する各事業年度において適用となります。
(5)雇用促進税制の拡充
現在、増加雇用者数1人当たり20万円の税額控除が受けられますが、これが1人あたり40万円の税額控除となります
(6)中小企業対策・農林水産業対策
① 商業・サービス業及び農林水産業を営む中小企業等が経営改善に向けた設備投資を行う場合に30%の特別償却又は7%の税額控除ができる制度を創設
② 中小法人の交際費課税の特例を拡充(中小法人の支出交際費 800 万円まで全額損金算入)
(7) 復興支援のための税制上の措置
① 避難解除区域等における避難対象雇用者等を雇用する場合の税額控除制度、及び設備投資を行う場合の即時償却や税額控除ができる制度について、新たに避難解除区域等に進出する法人に同様の措置の適用
Ⅳ 消費課税
1 衝突被害軽減ブレーキを搭載した先進安全自動車に係る自動車重量税及び自動車取得税の特例措置の対象に5トン以上の一定のバスを追加
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