100%グループ内の法人間の譲渡取引の損益の繰延べの影響
投稿日:2010年08月18日水曜日 17時56分35秒
投稿者:走る税理士 志村 賢一 カテゴリー: 法人税
資本に関する取引等に係る改正「100%グループ内の法人間の譲渡取引の損益の繰延べ」について
企業グループを対象とした法制度や会計制度が定着しつつある中、税制においても持株会社制のような法人の組織形態の多様化に対応するとともに、課税の中立性や公平性等を確保する必要が生じていることから、資本に関係する取引等に係る税制の見直しを行うということで平成22度の法人税法が改正になっています。
改正の中の目玉と思われるものに「100%グループ内の法人間の譲渡取引の損益の繰延べ」というものがあります。
これを、具体的な説明をすると、
兄弟aとbがいます。兄aはA会社の100%株主、弟bはB社の100%株主です
A社が土地を仕入れて開発し、B社に転売、B社は購入した土地に建物を建て販売するといった、業態が営まれている場合に、平成22年10月1日以後に取引については、グル-プ課税制度が強制適用されます。
AB間で売買された土地に関しての譲渡損益に対する法人税の課税は、土地がグル-プ外に売却されるまでA社への課税を見合わせるという制度です。土地に関しては棚卸資産にも適用が及ぶので、中小の法人では親族が不動産業をやっていて、関係法人間で売買を行う業者もいるので、グル-プ法人課税への対応を考慮しておく必要がありそうに感じます。
1.取引が
(1)H22.12.01 法人A~Bへ棚卸資産としての土地イを譲渡しました。
①取得価額 1,000万円
②譲渡金額 1,100万円
(2)H23.03.31(A法人の決算日)においてB法人はイの土地を棚卸資産として保有しています。
このような場合
2.譲渡時の処理
(1)A法人におけるH23.03.31の処理
① 会計処理 取引は時価によって行われるため、譲渡法人Aは譲渡益又は損が発生します。この損益は会計上はそのままの仕訳を行います。
② 申告調整 法人税の所得計算において申告調整により繰り延べられます。
譲渡益は減算(損金算入)
譲渡損は加算(益金算入)
(2)B法人における処理
通常の取引に同じ。実際の取引金額に基づいてそのまま資産計上する。
申告調整の必要なし。
会計処理等
1. 対象となる法人完全支配関係とは
(1) 新たに規定された完全支配関係とは、次の2つの関係をいいます。
(法2十二の七の六、法令4の2②)
イ 当事者間の完全支配関係
一の者が法人の発行済株式等 の全部(100%)を直接又は間接に保有する関係
(例)
ロ 法人相互の完全支配関係
一の者との間に上記イの関係(当事者間の完全支配関係)がある法人間の相互の関係
(例)
「一の者」とは、株主グル-プを指し、個人である場合には、その個人及びこれと特殊の関係のある個人(その個人の親族等)をいいます。
(2) 確定申告書の添付書類
平成22 年4月1日以後に開始する事業年度から、他の法人との間に完全支配関係がある法人の確定申告書の添付書類に、当該法人との間に完全支配関係がある他の法人との関係を系統的に示した図が追加されました。(法規35 四、37 の12 五、改正法規附則2①)
2.100%グループ内の法人間の資産の譲渡取引等について
概要
グル-プ法人の一体運営が進展している状況を踏まえ、実態に即した課税を実現する観点から、100%グル-プ内法人間の資産の移転については、グル-プ外への移転を行った時まで課税を繰り延べる制度が強制適用となります
3.対象となる譲渡
譲渡損益調整資産とは、次の資産をいいます。
①固定資産(固定資産である土地を含む)
②土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く。=棚卸資産としての土地)
③有価証券
④金銭債権
⑤繰延資産
で次に掲げるもの以外のものをいいます(法61 の13 ①、法令122 の14 ①、
法規27 の13 の3①、27 の15 ①)。
イ 売買目的有価証券
ロ 譲受法人において売買目的有価証券とされる有価証券
ハ その譲渡の直前の帳簿価額が1,000 万円に満たない資産
4.繰り延べた譲渡損益の計上等
(1)譲渡時の処理
①譲渡法人の決算処理
イ 会計処理 取引は時価によって行われるため、譲渡法人は譲渡益又は損が発生します。この損益は会計上はそのままの仕訳を行います。
ロ 申告調整 法人税の所得計算において申告調整により繰り延べられます。
譲渡益が生じた場合は減算(損金算入)
譲渡損が生じた場合は加算(益金算入)
②譲受法人における処理
通常の取引に同じ。実際の取引金額に基づいてそのまま資産計上する。
申告調整の必要なし。
(2) 譲受法人における一定の事由の発生とは
譲受法人において譲渡損益調整資産の譲渡、償却、評価換え、貸倒れ、除却などの事由が生じた場合には、それぞれ事由の区分に応じた金額 を、その事由が生じた日の属する譲受法人の事業年度終了の日の属する譲渡法人の事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入することとされました。(法61 の13 ②、法令122 の14 ④)
(3) 譲渡損益の戻入れ処理(譲渡法人)
① 売却、除却をした場合
繰延べられた譲渡損益額を戻し入れます。
② 減価償却をした場合
譲渡損益のうち譲受法人の取得費に占める減価償却費の額の割合相当額を益金に戻し入れます。
(4) 譲渡法人及び譲受法人の通知義務
課税の繰延や戻入れ処理をするために、譲渡法人又は譲受法人は、次に掲げる事由が生じた場合には、譲受法人又は譲渡法人に対して、それぞれ定められた内容をそれぞれの期限までに通知しなければならないこととされました。(法令122の14 ⑯〜⑱)
①譲渡法人
譲渡損益調整資産を譲受法人に譲渡したこと
譲渡した資産が譲渡損益調整資産である旨(減価償却資産又は繰延資産につき簡便法の適用を受けようとする場合には、その旨を含みます。)
②譲受法人
(ⅰ) 譲渡損益調整資産が譲受法人において売買目的有価証券とされる有価証券であること
(ⅱ) 譲渡損益調整資産が減価償却資産又は繰延資産である場合において、譲渡 法人から簡便法の適用を受けようとする旨の通知を受けたこと
(ⅲ) 上記⑵イの事由が生じたこと
〔適用時期〕
平成22 年10 月1日以後に行う譲渡損益調整資産の譲渡について適用されます
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