25.07.31 消費税率引上げに伴い不動産賃貸業者が押さえておきたいポイント
1.消費税の引き上げと経過措置の概要
皆様ご存知のように、平成26年4月1日から国税と地方税を合わせた消費税率が、現在の5%から、8%に引上げることが予定されています。
一定の要件(平成25年9月30日までの間に不動産賃貸契約等を締結し、その契約に係る賃貸借期間が平成26年4月1日以後になった場合等)を満たす不動産賃貸取引については、引上げ日以降に行われる取引にあっても改正前の5%の税率が適用される「経過措置」が講じられています。
消費税率の経過措置は事業者の選択により適用するものではなく、また通知の有無や当事者間の合意にかかわらず適用要件に該当した場合には賃貸人及び賃借人等の双方に経過措置の適用があることになります。
.賃貸借契約における経過措置
指定日の前日である平成25年9月30日までの間に資産の貸付けに係る契約を締結し、平成26年4月1日前から同日以後引き続きその契約に基づいて資産の貸付けを行っている場合で、契約内容が次の①及び②又は①及び③の要件に該当するとき、平成26年4月1日以後の貸付けに対しても、消費税は改正前の5%の税率が適用されます。
① 契約に係る資産の貸付期間及び期間中の対価の額が定められていること
② 事業者が事情の変更その他の理由により、対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと
③ 契約期間中に当事者の一方又は双方がいつでも解約の申入れをすることができる旨の定めがないことその他対価に関する契約の内容が政令で定める要件に該当していること
経過措置摘要のポイント
イ 「消費税率の改正があった場合には改正後の税率による」旨の文言の条項が有る契約書は②(変更を求めることができる旨の定め)には該当せず、経過措置(5%)が適用になります。
しかし、この条項に基づいて平成26年4月1日以後の期間に係る賃貸料を実際に変更した場合には、その変更後の賃料は8%が適用されます。
  ロ トラブル防止のため、下記のような条項を設けた契約書が多数見受けられるようになりましたが、このような条項を設けている契約書は②の要件を満たさないことになり、経過措置は適用されず8%が適用されます
「賃料が経済事情の変動、公租公課の増額等により不相当となったときは、賃貸人は契約期間中であっても賃料の増額請求できる。」
3.経過措置の適用を受けた旨の通知義務
経過措置の適用がある貸付を行った場合については、その相手方に対して書面で通知することが求められています。(改正法附則5条⑧)
通知の方法は請求書等に、その旨の表示(「消費税改正法附則5条3項等」(経過措置の適用により5パーセント程度の表示)をすることとして差し支えないことになっています。(法令解釈通達22)
賃貸借契約にあっては、予め締結した契約書によって、支払いも銀行振込み等の方法が使われて、貸主から請求書や領収証を発行しない場合が多いので、通知書により 「経過措置の適用により消費税5%」 である旨を借主への通知するのが無難と考えます。
4.契約書の内容確認直し
最近の賃貸借契約書では経過措置の対象となる場合が少ないと思われますが、事前に契約書の内容確認して、消費税の適用税率を確定しておくこと必要です。
 (1)  賃料変更のお願い
既存の契約書に賃料が変更可能な条項が設けてあり、経過措置が適用とならない契約書の場合に、消費税分の値上げをできないと賃料の本体価格は、4月1日以降減少することになるので、消費税分の賃料値上げをお願いしなければなりません。
(例) 契約書に「賃貸料月額100,000円(税込)」と総額表示がある場合
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    (2)  契約書の内容変更
既存の契約書で賃料が変更可能な条項が設けてある場合においては、下記例示②のように消費税の引き上げに伴って消費税分の改訂が連動出来る内容に契約書の条項を検討をすると良いと思います。
 (例) ① 賃貸料、金100,000円(消費税等別)のような表現の場合
② 賃貸料、金100,000円(消費税率が変更された場合には、変更後の率による。)
消費税率は平成27年10月1日から10%に更に引き上げることが予定されているので、この機会に賃貸借契約書の内容を再確認し、賃料の見直しや契約条項の変更についての検討を行うことが必要です
5.会計処理
賃貸契約の内容によって会計処理が異なるので、契約条項を確認しておくことが必要です。
(1) 不動産賃貸業者
①経過措置の適用が有る場合
イ  平成25年9月30日までの契約については、契約期間満了までの賃貸収入は平成26年4月1日以後についても消費税5%の処理となります。
ロ  借主へ賃料に対する消費税が5%である旨の通知をすることが必要です。
②経過措置の適用が無い場合
平成26年4月1日以後の賃貸収入は消費税8%の処理となります
(2) 借主
①経過措置の適用が有る場合
イ  平成25年9月30日までの契約に関しては、契約期間満了までの賃貸料(地代家賃)は消費税5%の処理をする。
ロ  借主へ賃料に対する消費税が5%である旨の通知を請求すると良いでしょう。
②経過措置の適用が無い場合
平成26年4月1日以後の賃貸収入は消費税8%の処理になります。